尾木ママ立腹! 「ゆとりは悪くない!」

社会

更新日:2012/12/3

 「ゆとりは仕事ができない」「だらしないのはゆとりだから」……若い世代に向けられる、このような中傷を耳にしたことがある人は多いはずだ。最近では自嘲気味に「ゆとりなんで」と口にする若者もいるほどで、“ゆとり教育”および“ゆとり世代”に対する世間の風当たりの強さを感じずにはいられない。

 この風潮に対して、「ゆとり教育の理念は全く間違ってはいません」と声を大にするのが、尾木ママこと尾木直樹。新刊の『生きづらいのは「ゆとり世代」だから、と思っている君たちへ』(尾木直樹/ブックマン社)では、日本の教育の現状に「超ムカついている」と述べ、普段のおだやかさから一転、厳しい意見を投げかけているのだ。

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 まず、尾木ママは、先の発言にもあるように、ゆとり教育が掲げた「問題解決能力」「発想力」「洞察力」を身に付けていくという目標に完全同意。問題は、目標の到達度で個別に評価する「絶対評価」を行うはずが、従来の他人と比較して評価する「相対評価」になってしまったこと。尾木ママいわく、「そこからかしら、ゆとり教育の構造が全く反転してしまったのは」という。

 さらに、学校が週5日制になった2002年度がゆとり教育の完成年度と言われているが、同年1月に「当時の遠山敦子文科大臣は「ゆとり教育はやらない」と事実上の転換宣言。そのため、「ゆとり教育は本格実施と言われる2002年度以降、一度もきちんと実施されていないんですよ」というのだ。ということは、いま「ゆとり世代」と名指しされる人たちは、本来の意味でのゆとり教育は受けていないということになる。

 では、日本の教育がおかしくなったのは何のせいなのか。尾木ママは、ずばり「ゆとり教育のせいではなくて、新自由主義が台頭した小泉・竹中路線のあの10年間」と述べている。そして、この「失われた10年」のために世界から遅れをとってしまった上、ゆとりの揺り戻しでいまは詰め込み教育にしようと、非常に「場当たり的」な対処療法になってしまっていると指摘。「(文科省や霞が関は)腹のなかで国民を馬鹿にしているんですよ」と、尾木ママは怒りを炸裂させている。

 また、尾木ママは「僕たち、ゆとり世代だから馬鹿なんです」と自虐的な20代の若者たちに向かって、「それはメディアがつくった虚構や誤報」だとアピール。「あなたは“ゆとり社員”ではない。学校や職場で形成されていくべき“生きる力”がまだ形成されていないだけなんだよ」「生きづらさを抱えているのはあなただけじゃない」「人とぶつかるのは当たり前なの。大きく構えてね」と語りかけている。

 一方で、「人のせいや世の中のせいにばっかりしていたら、ずっと幸せになれないわよ」という尾木ママ。たしかに、ただいたずらに“ゆとり”を揶揄しているだけでは、何も発展しないのは当然のこと。世界に目を向け、一体どのような教育が「生きやすい社会」をつくり出せるのかを考えていくことが優先課題だろう。