金子哲雄に学ぶ 40代からのエンディングノート

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更新日:2012/12/3

 10月2日に41歳という若さで逝去した、流通ジャーナリストの金子哲雄。突然の訃報に驚いた人も多かったが、生前に葬儀から墓の手配までを済ませていたことでも大きな話題を呼んだ。先日発売された著書『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(金子哲雄/小学館)には、彼がどんな思いで余命宣告を受け止めたのかをはじめ、どのように“死の準備”に取りかかることにしたのかもつぶさに綴られている。

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 まず、8月には弁護士に連絡をして公正証書遺言の作成に入り、葬儀社も手配したという金子。説明に訪れた葬儀社の社長からは「え! ご本人の葬儀ですか!?」と驚かれたことも明かしている。また、戒名も生前に依頼し、その戒名が持つ意味に感じ入り、「今まで“見えていなかったこと”が見えるようになり、寿命を延ばす結果となった」という。「賢い選択、賢い消費をすることが、人生を豊かにする」を謳い続けた彼らしく「最後の選択を間違えたくはなかった」という思いもよく伝わってくるが、それ以上に胸を打たれるのは、残される家族や親しかった人々に対する、やさしさやいたわりの気持ち。文中でも、「自分の“死”にまつわることなのに、作業中、喜んでくれている相手の顔を思い浮かべて、笑みさえこぼれた」と述べているが、死の間際にあってもなお誰かを気遣える心のありようには、感服せずにいられない。

 このように、余命宣告を受けて準備を始めるケースもあるが、いまは元気なうちに“終活”を始める人も数多い。『エンディングノートのすすめ』(本田桂子/講談社)によれば、遺産相続や葬儀への希望をまとめ、家族やまわりの人たちに伝えるための書面「エンディングノート」の利用者は、じつは40代・50代の人も多いらしい。本書は、エンディングノートのつくり方から、利用者がどのような思いでエンディングノートを書くことにしたかなどの体験談までが掲載されているので、入門書にもうってつけだ。

 また、いま増えている“おひとりさま”にとって心強い1冊が、『おひとりさまの幸せな死に方』(月山きらら/長崎出版)。本書は「おひとりさまは、親を看取り、見送る側にもなる。さらには自分の終焉も考えなければならない」と指摘しているが、たしかに独身者に限らず、ひとり親や核家族にとっても“安心して死ぬ”ための環境づくりは必須といえよう。

 自分にとって幸せな人生の幕引きとは何なのか。一見、ネガティブなテーマにも思えるが、きっと自分らしく生きる意味を考えるきっかけにもなりえるはず。そして何より、大切な誰かを想う気持ちにも気付く、そんな機会にもなるのではないだろうか。