何が正解? 赤ちゃんのお出かけ

出産・子育て

公開日:2012/12/5

 飛行機のなかで泣き叫んでいた赤ちゃんに耐え切れず、母親に激怒したことを雑誌のコラムに綴り、賛否両論を呼んでいるマンガ家のさかもと未明。コラムによれば、さかもとは母親に「あなたのお子さんは、もう少し大きくなるまで、飛行機に乗せてはいけません。赤ちゃんだから何でも許されるというわけではないと思います!」と言ったというが、これに対し、Twitterで有名人たちも次々に反応。そのひとり、乙武洋匡は過去に書いたブログの文面をあげ、「我慢というか、その光景をほほえましいと思える大人になりたいな。たとえ寝不足だとしても(笑)」と意見した。

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 このように、赤ちゃんは無論、子連れのお出かけにはいろいろと苦労が絶えないもの。はたしてどのように対処するのがいいのか、頭を悩ます親は多いだろう。そんな人におすすめしたいのが、『子連れお出かけらくらくマナー どこへ行っても大丈夫!』(葦野そう:著、今井登茂子:監修/土屋書店)。本書では、電車やスーパーマーケット、外食などのシチュエーションに合わせた対応策を紹介しているのだ。

 たとえば、電車などで子どもが騒ぐ場合は、まず「自分の子どもがなぜうるさくしているのか、よく見きわめることが大事」らしい。電車に乗るのが楽しかったり、めずらしくて気持ちがハイになっているのであれば、「楽しい気持ちはそのままで、声の大きさを落とす」ことを促す。親も声を落とし、“ひそひそ声の楽しさへと誘導”してあげるといいという。また、家の中と同様に大きな声を出したり、ふざけたりしている場合は、「家の内と外で区別しなければいけないこと」がわかっていないしるし。「大きな声を出さずにいられたら〇〇しようね」などと約束遊びをして、さらに家の中と外の違いについてちゃんと説明をすること。どうしても静かにならなければ、次の駅でいったん下車し、場所を変えることで「親の話を聞くモード」をつくり出すといいそうだ。

 外食に出かけるときは、まず、ファミレスやファストフードなどの子連れでも安心できる店を選ぶこと。そして、大人より子どもが早く食べ終わってしまったときは、大人と一緒におしゃべりをするのが退屈させないひとつの手だ。だが、ママ友とおしゃべりしたいときも、もちろんある。そういうときは「最低限のルールとマナー」に気を配り、自分のしたいことを少しだけがまんして子どもに目配りし、子どもにも遊びたいのを少しだけがまんしておしゃべりにつきあってもらう。こうして「いつでも来てね」と言われるような“スマートな親子”をめざすことが「ママの自由を広げる方法」にもつながっていくそうだ。

 さかもとの例もあるように、世の中には他人の子どものマナーにうるさい人も多い。「ちょっとは大目にみてくれたらいいのに」と感じている親も少なくないだろう。本書には、そんな意見に対して「まわりの人にひと声かけるパフォーマンス」もときには必要と書いている。たしかに、「お騒がせしました」の一言で、まわりの反応もきっと変わるはず。先の騒動でも、Twitterでつんくが飛行機内でさかもとと同じ体験をした際、「すいません。疲れてはるのに居眠り出来なかったでしょ」と母親に声をかけられ、「いえいえ、2時間泣いてたこの子が一番がんばった。エライエライ」と返したエピソードを披露していたが、このお母さんのように周囲に対して気遣いを見せることは大切なのかもしれない。

 振り返れば、80年代後半に起こった“アグネス論争”では、講演やテレビの仕事先に子どもを連れていったアグネス・チャンの「子連れ出勤」スタイルに対して、賛否両論が吹き荒れた。当時に比べれば、女性はもちろん男性の育児休暇が制度化されたり、企業が託児所を設けるなど、仕組みの面でも充実しつつある。しかし、とくに母親に向けられる社会の目は、決してやさしいものではない。図らずも“赤ちゃんの飛行機搭乗問題”によって露呈した“ママの苦難”。少子化が国家の懸案になっているいま、こうした些細な問題を考えていく必要があるのではないだろうか。