1000万アクセスのWebマンガ『ワンパンマン』とは?

マンガ

公開日:2012/12/21

 アニメ化が噂される『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(谷川ニコ/スクウェア・エニックス)をはじめ、今、Webマンガが大きな注目を集めている。そのなかでもモンスター級の人気を誇るWebマンガがついに書籍化された。集英社のWeb「となりのヤングジャンプ」で累計1000万アクセスをマークした『ワンパンマン』(村田雄介:著、ONE:原著/集英社)がそれだ。

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 この『ワンパンマン』、『アンパンマン』とは何の関係もなくて、「ワンパンチ」で敵を倒すヒーローのお話。就職活動に行き詰まった青年「サイタマ」が「ヒーローになりたかった」という小さな夢を思いだし、猛特訓。最強の力を手に入れるのだが、とにかくこの強さというのがハンパないのだ。

 敵がどんなに強かろうがすべて一撃、「ワンパンチ」でこともなげに倒してしまう。敵が巨大でも、ラスボスっぽくてもおかまいなし。たとえば、拳を1回振るだけで街を壊滅状態に陥れてしまう超巨大な「マルゴリ」という敵と戦ったときのこと。サイタマはマルゴリの攻撃に街ごとつぶされ、地面にはぽっかり大きな穴があいているだけ。ところが、次の瞬間、その穴からサイタマが飛び出し、一発パンチを見舞うと、マルゴリはそれだけで顔が砕け散り、血しぶきをあげながら地面に沈んでしまう……。ちなみに、サイタマはほぼ無傷だ。

 また、この『ワンパンマン』には、サイタマの弟子になった他のヒーローたちも参戦しているのだが、彼らがどんなに苦戦しても、サイタマが登場したとたん、一瞬で勝負がついてしまう。

 たとえば、サイボーグヒーロー「ジェノス」が敵と戦った際、ジェノスは腕や体を壊され、自爆まで決意するのだが、サイタマが出てくると、一発の平手で敵を吹っ飛ばしてしまう。ページ数にすればジェノスが戦いに費やしたのが20ページに対し、サイタマが費やしたページはわずか1ページ。

 主人公の戦いがこんなにあっさりしていて大丈夫か、と心配になってしまうほどで、実際、サイタマ自身もあまりの強さに戦いの高揚感や緊張感がなくなったと悩んでいるのだが、この作品を読んでいると、不思議なことに、その瞬殺っぷりが快感になってくる。他のヒーローたちが敵の怪人たちと苦闘を繰り広げれば繰り広げるほど、サイタマが登場した後の気持ちよさが増していくのだ。

 しかも、特筆しなければならないのは、これだけ強いサイタマが、ハゲ男だという点だ。ヒーローなのにハゲ。ヒーロー=かっこいいという常識を覆すビジュアルである。

 一応、「頭がハゲあがるほどの激しい特訓(自称)」をしたことが原因らしいのだが、だったらかっこいいマスクをつけたりなんなりの方法をとればいいはず。ところが、「サイタマ」は普通に素顔のまま、ハゲ頭のままで登場する。

 しかも、強すぎて苦境に立たされることがないからか緊張感のない顔立ちで、戦いに対する気の抜けっぷりがにじみ出ているのである。ほかの登場人物がかっこよく、キリっとした面持ちで登場するもんだから、ことさらにサイタマの緊張感のなさが引き立つ。その顔は、絵描きうたを歌いながら幼稚園児でも描けそうなほどで、アンパンマンよりも簡単に描けるであろうことは確実だ。うっかりすれば、モブキャラと勘違いしそうですらある。

 とにかくこの『ワンパンマン』、ヒーローマンガとしてはあらゆることが前代未聞、衝撃の連続なので、未見の人は必ずチェックしてみてほしい。

 また、『ワンパンマン』は、もともと「新都社」というWeb投稿マンガサイトで連載されていた作品が注目を集め、「となりのヤングジャンプ」でリメイクされたもので、リメイク以降は作画を『アイシールド21』(稲垣理一郎:原作/集英社)の村田雄介が担当している。村田はネットでも画力を絶賛されているマンガ家で、ヒーローや敵の造形ももとんでもなくかっこよく、戦闘シーンも迫力満点。初期『ワンパンマン』をご覧になっていた方も、ワクワクしながら楽しめること間違いない。