電子書籍を読むことに抵抗がなくなったキッカケって? 【第2回】ビューワー開発者に読みやすさへのこだわりを聞いてみた!

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更新日:2011/10/6

紙の書籍のフォントや組版から派生したモリサワの「MCBook」に対して、モバイル市場のソフトウエア開発を行うACCESSは、書籍データから電子書籍向けにコンテンツを製作するツールやビューワー、iPhone・Androidアプリなどを次々と生み出している。そこで、ACCESSの浅野高史さんに電子書籍のソフト開発について聞いてみた。

 

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株式会社ACCESS
電子出版PF 開発部
部長 浅野 貴史さん

 

ACCESSは長年にわたり携帯電話向けのブラウザーを中心に様々なビューワーアプリケーションを開発している。特にiモードのブラウザ開発では注目を集めた会社だ。そのACCESSがスマートフォンの普及に伴い、スマートフォン、タブレッド向けにビューワーアプリケーション開発に乗り出しのは約1年半前だそう。

「強みはサクサク読めることと、読み応えという部分にはこだわっています」と浅野さん。電子書籍をダウンロードしてからの立ち上がりの速さ、ページめくりのスムーズさや自然さなどユーザーが使いやすいビューワーを実現した。

 

ビューアは NagisaWorks の 「i文庫」技術 とACCESSのテクノロジを結びつけた傑作

ACCESSはNagisaWorksが手がける電子書籍リーダーアプリ「i文庫」と協業し、より使いやすく、読みやすい電子書籍リーダーアプリを開発。「i文庫」は著作権の切れた作品をインターネット上で無料公開している「青空文庫」のコンテンツを収録しており、1万点近くある青空文庫の作品を手軽に読むことができる。また、青空文庫が読めるだけでなく、PDFやzip圧縮、JPEGにも対応しているので読書好きで本を「自炊」するコアな読書家にも人気のアプリだ。

ACCESSのビューワーには「活字系ビューワー」と「コミック系ビューワー」の2種類。ビューワー開発ではACCESSは後発ではあるが、「活字系ビューワー」については定評のある「i文庫」のビューワーをベースにして、さらに使いやすく、読み応えのあるビューワーにカスタマイズしたのだ。

 

  

NagisaWorks の 「i文庫」とアクセスのテクノロジを結集したビューワー

 

たとえば、読者がカスタマイズして文字サイズが変わった時、いかにレイアウトが早く、スムーズに変更されるかどうか。強調したい部分につける「・(ボウ点)」の打ち方やルビの位置など、細かい配慮が必要になるそう。読者は普段、気にも留めていない部分だ。

開発過程では、実際の本と電子書籍を何度も見比べて、文字に間違えがないか校正するだけでなく、紙の本と読み心地に違いがないかをチェック。また出版社の担当者に対して使用感のヒアリングを繰り返すことによって、ビューワーの精度を高めていったという。そうして、出版社側も満足のいくビューワーが仕上った。

一方、「コミック系ビューワー」は漫画や雑誌の電子書籍に使われているが、文字だけの本を読むのと違い、漫画の1コマを拡大したり、雑誌の写真だけをタップし拡大して見ることがある。拡大することで画像は粗くなってしまうが、ACCESSのビューワーは最大の拡大率でも遜色のない画像を表示することができるのだ。

また、ACCESSは「クロスメディアアプリ」といわれる複合型アプリも開発。1つのアプリの中に同じ作品のライトノベルやコミックなどの電子書籍を購入できるストアが入っているだけでなく、ミニゲームやPV視聴、壁紙など、作品に関連したさまざまなコンテンツが搭載されており、作品のファンにはたまらないアプリだ。今後、このようなアプリが確立していけば、ただ“読むだけ”の電子書籍ではなく、本の枠を超えたものになっていくだろう。

 

  

『緋弾のアリア』のクロスメディアアプリ。本を購入できるだけでなく、ミニゲームなどのおまけコンテンツも入っている

 

今度、電子書籍を読むときはフォントに注目したり、カスタマイズしたときのレイアウト、操作性、拡大してきれいに読めるなど気にして読んでみると、開発側のこだわりが分かるかもしれない。