大人気ゆるキャラ 「くまモン」関連本でゆる~く癒される!?

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公開日:2012/12/22

 これまで地道に活動していた郷土のマスコットキャラクターが、みうらじゅんにより「ゆるキャラ」と命名されて以来、がぜん注目を集めるようになった。郷土の特色を着ぐるみで表現しているわけだが、小僧に鹿の角が生えた奈良県の「せんとくん」のように突拍子もないセンスだったりして、なかなか味わい深いものがあるのだ。

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 こうした全国のゆるキャラたちが一堂に会した「ゆるキャラグランプリ」が2010年より開催されており、今年で3回目。2011年度は全349体の中から熊本県の「くまモン」が1位に輝き、今年はその「くまモン」に敗れ2位に甘んじていた愛媛県今治市の「バリィさん」が1位に輝いた。

 「くまモン体操」はYoutube再生回数100万回を突破し、Twitterのフォロワー数は10万人を超えるなど大人気。熊本県の許可さえあれば、無料でくまモンの版権使用が許されるとあって、携帯ストラップや抱き枕など関連グッズも大盛況。さらにはカゴメの「野菜生活100 デコポンミックス」の全国CMに起用されるなど、全国区の人気を獲得した。

 そんななか、近頃相次いで出版されているのが、くまモン関連本だ。『熊本県営業部長 くまモンだモン! ~まるごとくまモンBOOK~』(竹書房)は、日本で唯一の公務員キャラ・くまモンが日本全国を地道に営業活動した模様を収録。『くまモンのあしあと』(宝島社)はクマもんの営業活動の一日を追ったフォトエッセイ。また、木村伊兵衛賞の写真家・浅田政志によるくまモン初写真集『くまモン、どこ行くの?』(くまモン、どこ行くの? 製作委員会:編/飛鳥新社)や、熊本の名所をくまモンが訪ねた『くまモンといっしょ! ~6泊7日のサプライズ旅~』(扶桑社)など、いずれもくまモン写真集といった内容。さらには『くまモンのたびにっき 東京編』(雨宮菜々子/ポプラ社)では、東京の名所に隠れたくまモンを探す絵本まで登場した。

 そういえば筆者の友人(熊本県出身)の父親が、くまモン腕時計を作り販売していた。そのときは「なんだこりゃ……こんなの売れるのか?」という印象しかなかったけれど、ちょっとしたブームになっていたというわけだ。25億円以上の売り上げを記録したくまモングッズカタログなど内容充実の『GO! GO! くまモンファンブック』(GO! GO! くまモンファンブック編集部/スペースシャワーネットワーク)が発売されるなど、熊本生まれのアイドル的キャラとして確実にファンは存在するらしい。

 『くまモン★カレンダーBOOK』(祥伝社)や『くまモン! なかみぎっしりブック』(実業之日本社)などトートバッグ、チャーム、カレンダーなど豪華おまけ付の本も相次いで発売され、夢にまでくまモンが出てきそうな勢いなのである。熊本県のPR以上にキャラクタービジネスとしても大成功を収めた。

 ちなみに今年1位に輝いた「バリィさん」、今のところ関連本は出ていない。一体、くまモンとの差はどこにあるのだろうか? 焼き鳥で有名な今治市をイメージして「鳥」の着ぐるみなわけだけど、バリィさんが焼き鳥屋を紹介する本なんてわけにもいかないか……。

 『ゆるキャラグランプリ公式ランキングブック2012―2013』(みうらじゅん;監修/扶桑社)が刊行されるなど、ゆるキャラブームは当分続きそうな勢い。もはや、ゆるキャラたちは地域活性化に貢献するばかりでなく、キャラクタービジネスにもなりえる。ただし、ゆるキャラの数は1200体とも1600体とも言われている。つまり、くまモンやバリィさんのように全国区な人気を得るのはごく一部。あえなく倉庫入りとなるゆるキャラも少なくない。こうした各地域のゆるキャラの現状については『ゆるキャラ論~ゆるくない「ゆるキャラ」の実態』(犬山秋彦・杉元政光/ボイジャー)に詳しい。全国津々浦々のゆるキャラを通して地域社会の現状に目を向けてみるのもいいだろう。「かわいい」「癒される」というだけではなくて、ゆるキャラには哀愁までも漂っているのだ。

文=大寺 明
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)”