ピロートークは聞かれて当然! “大奥あるある”

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公開日:2012/12/21

 12月22日に封切られた映画『大奥~永遠~右衛門佐・綱吉篇』。男女を逆転させて徳川3代将軍・家光の時代を描いたテレビドラマに続き、映画では徳川5代将軍・綱吉の時代が描かれる。徳川綱吉を菅野美穂、大奥総取締役の右衛門佐を堺雅人が演じることも話題だ。「お正月は豪華絢爛な大奥の世界を観たい!」という人も多いと思うが、今回は映画をより楽しむために、実際の大奥で繰り広げられた珍事や、あまり知られていない習慣などを紹介したい。

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 まず、大奥モノでつきものなのが、将軍と女性が夜をともに過ごす閨(ねや)のシーン。この男女逆転版『大奥』(よしながふみ/白泉社)や人気を博したNHK大河ドラマ『篤姫』などでもたびたび登場するが、寝床の側には衝立があり、必ずそこには立会人のように女性たちが控えている。『奔放でスキャンダラスな大奥のヒミツ』(別冊宝島編集部/宝島社)によれば、実際の大奥でも将軍の寝床の両側に衝立があり、片側に御伽坊主(将軍の雑用係)、もう片側に御中臈(過去に将軍のお手付きがある女性)が「御添寝役」として横になっていたのだという。この2名は「会話やコトの様子を一寸漏らさず聞き覚え、翌朝、御年寄に報告する役割」を担っていたのだが、じつは前室にも御中臈(過去にお手付きなし)と御年寄(大奥でもかなりエライ人。お手付きなし)が宿直として寝ていたらしい。

 なぜ、これほどまでに厳重な監視システムを敷いていたかというと、将軍の身を守るのはもちろん、将軍の相手をする女性による「度の過ぎた『おねだり』を防ぐため」だったよう。綱吉の場合、御用人の柳沢吉保(映画では尾野真千子が熱演)の側室・染子を自分の愛妾にしていたのだが、その染子が寝床で「吉保に甲府100万石を与えてほしい」と頼み込んだことがあった。“甲府は徳川の一族が領主となった重要拠点”だったから、そこにただの使用人を領主にし、100万石も与えるというのは「前代未聞の要求」。このおねだりの後、綱吉は急死したため実現はしなかったが、これを機に、寝床の監視は厳しくなったというのだ。現代でも、ピロートーク時のプレゼントなどのおねだりは効果アリと言われているが、この点、いまも昔も変わらないということだろうか。ちなみに、現代人なら「夜の会話を他人に聞かれて恥ずかしくないのか?」と思ってしまうが、将軍は「性交渉の会話が聞かれるのは当然のこと」という教育を施されていたため、羞恥心はなかったらしい。

 また、大奥は女の園。側室同士のいがみ合いのほかにも、いじめもあったそう。とくに年越しの行事である「新参舞」は、その年に採用された新人たちが大晦日の夕食後、裸で踊るという催し。「1年間に溜まりに溜まったストレスを晴らすイベントだった」という見方もあるようだが、いまなら確実にパワハラである。そのほかにも、節分には男性が年男として大奥に出向いたのだが、女中たちはその男性を「布団で簀巻きにして、歌を歌いながら胴上げ」し、最後には「床に叩き落とし、ゲラゲラと大笑いしていた」のだとか。げに恐ろしい節分だ。

 しかし、大奥の暮らしのなかには、現代に活かしたいヒントもある。『大奥の食卓 長く美しく生きる「食」の秘密』(緋宮栞那/講談社)によれば、大奥における食事は、みそや発酵食品、野菜、魚が中心で、「とても美と健康にいい食事」だったよう。本書では、大奥の姫たちが食べていたという美容と健康に効果的な食材を使ったレシピ集も掲載されているので、これで大奥美人を目指してみるのも一興だ。