初心者がコミケに行く前に読んでおきたい漫画

マンガ

更新日:2012/12/25

 今年も12月29~31日に開催される国内最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」(以降コミケ)。オタクと一般人を線引する大きな境界線と認識されているのか、マンガやアニメが好きでも足を踏み入れる勇気が湧かない人が結構いるようだ。とはいえ、「実際どんな感じなんだろ?」、「どういう流れで参加するのだろう?」と密かに興味津々の人もいるはず。そんな人には、まずコミケのシーンが描かれている作品をチェックすることをお勧めしたい。

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 実際、最近のマンガ、ラノベ、マンガにおいて、オタク趣味のストーリーやキャラクターが登場する作品の多くで、コミケのシーンが取り上げられている(商標登録の関係上、「コミックフェスティバル」、「コミティア」など、その名は若干変更されている)。近年アニメ化などにより話題となった作品を挙げてみても、『げんしけん』(木尾士目/講談社)、『らき☆すた』(美水かがみ/角川書店)、『ハヤテのごとく!』(畑健二郎/小学館)、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(伏見つかさ/アスキー・メディアワークス)などがあるし、アニメ化以外でも『おたくの娘さん』(すたひろ/富士見書房)、『こみっく☆すたじお』(此ノ木よしる/講談社)、『マンけん。』(加瀬大輝/小学館)など、かなりの数におよんでいる。

 これらの作品はコミケの描かれ方で大きく2つの視点に別れている。『らき☆すた』や『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』などの“同人誌を買う側”としての視点と、『ハヤテのごとく!』や『おたくの娘さん』などの主として“同人誌を制作する側”の視点だ。

 買う側は、朝早くから会場の東京ビックサイトに入るための長蛇の列に並び、場内に入ったあとも人ごみをかき分けて人気サークル同人誌や企業ブースの限定グッズの売り場でさらに並ぶ。そして、午後になってひと段落つくと、今度は列をなさない無名サークルを巡り、自分の趣味に合うものを追い求める。

 また、制作側は、半年前のひとつ前の開催時(コミケは夏冬年2回開催)に次の申し込み書類を購入するところから始まり、数カ月前からのネタ作りや執筆、時には売り上げを稼ぐためにステマまがいのネット告知を行い、さらに“灰になる”ほど燃え尽きる最後の追い込み、当日の売場設営、コスプレした売り子を動員した販売などなど…。作品によって断片化されていたり、若干表現が誇張されているものもあるが、基本的にはコミケ独特の流れや会場の雰囲気をほぼ忠実に再現しているものが多い。

 その中でも、特に『げんしけん』は、買う側、制作側の両方を詳細に知ることができる、まさにガイド的作品と言っていいだろう。現代視覚文化研究会、略して「現視研(げんしけん)」と呼ばれる大学のサークルが舞台となっている本作は、初期は買う側としてのエピソード中心に描かれ、主人公の笹原完士が会長に就任してからは、同人誌を制作する側に展開していく。そのため、読み進めて行けばどちらも側も味わうことができるのだ。なお、『げんしけん』はオタク系ギャグやパロディーが満載だが、登場人物が密かに持つ心のトラウマを痛烈にエグりとるエピソードも盛り込まれており、青春群像劇としても楽しめるものとなっている。

 いずれにせよ、これらの作品に描かれるコミケの様子は、描いている漫画家の深い愛情か、あるいは実体験のなせる技か、十分な情報量を誇っているものが多い。まずはそれらを読んで雰囲気を疑似体験してから、実際に行くかどうか判断するといいだろう。そして覚悟が決まった際には、高い成果(?)を挙げるための心強いマニュアルとなるだろう。

文=キビタキビオ