あの人気写真家が伝授する“童貞史観”克服法

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2013/1/7

 写真集では異例のヒットとなった『スクールガール・コンプレックス』(イースト・プレス)をはじめ、吉高由里子や指原莉乃らの写真集も手がける人気写真家・青山裕企。男性が少女たちに抱くエロスをフェティッシュな視点で“美しく、儚く”切り取る独特の手法で圧倒的支持を集め、いまもっとも注目されている写真家といえるだろう。その女性に肉薄する写真からは、いかにも女性を知り尽くしているのだろうと思ってしまうが、しかし、実はこれが大間違い。先日発売された青春記『<彼女>の撮り方』(ミシマ社)では、「女性を撮るなんて、とんでもない! 無理な話でした」と、ストーカー的片思いや女性へのコンプレックスなど、ヘタレだった過去を告白しているのだ。

 まず、彼の話は「完膚なきまでに、童貞でした!」と振り返る高校時代に遡る。なんと、受験前日にバスの中でショートカットの女性に一目惚れし、“運命の人”と勝手に確信。翌日、試験会場で再会した際には、早々に受験を諦め、「どうやって声をかけるのか?」という難問に取りかかったという。結果、「財布をなくしたからお金を貸してほしい」という嘘をつき、彼女への接近に成功。当然、受験には失敗したが、合格した彼女とは文通でのやりとりがはじまった。

 ここまででも十分童貞っぽさが充満しているが、悲しいのはその後。一浪してようやく彼女がいる大学に入学したのはいいが、遭遇した彼女の隣には男子が……。絶望した青山は、その場から逃げ出し、思い出のバスでまさかの失踪! さらには「自転車で日本を旅しよう!」と思い立ち、自転車で北海道から沖縄まで走破。続いて世界二周の旅に出てしまう。だが、旅のあいだも彼女へ手紙をしたため、彼女の存在がどんどんと神格化。ドラマやマンガでもなかなかにお目にかかれない“ド青春”ではないか。彼が彼女に告白したのは、出会いから8年半後。旅で写真の楽しさにハマった青山は、彼女の写真を撮ることで「ある意味ストーカーみたいな存在から、ちょっとは格好良く見られるようになった…かな?」と思いに区切りをつけたそうだ。

 もともと「一人っ子で人見知りで、運動音痴でガリ勉で、コンプレックスの塊」だったという青山。高校時代の女性観も、「純粋無垢な、神聖なるもの」を求める自分と、「女性なんて不純で醜いものである」と決めつけ、どこか諦めている自分がいました」と振り返るように、まさしく童貞史観というべきものだったらしい。また、「天然な<彼女>」を追い求めていたそうで、その理由を“とくに女性経験が浅い男子が抱く「幻想の<彼女>像」に限りなく近かったから”と述べている。「女性は得体の知れないもの」という恐怖感——しかし、「思春期のころに抱えていた満たされなかった想いが、今でもマグマのように自分の奥底に眠っている」ことに気付いてからは、写真を通して“彼女たち”と対峙していこうと決意。代表作『スクールガール・コンプレックス』の制作は、いわば青山自身がコンプレックスを克服する過程となったのだ。

 女性について、「自分でも鏡を見ればわかるように、不純であったり計算高かったりといったように、これが人間本来の姿であり、醜くも、とても愛おしい存在であることに、ようやく気付きました」という青山。彼は「女子にモテたければ、カメラを持て!」と書いているが、その言葉は自信のない男子たちへの“コンプレックスを乗り越えろ!”というメッセージのようにも感じられる。

 ちなみに、本書には女の子を撮るときのアドバイスも満載なのだが、「有名な<彼女>の撮り方」を伝授するページでは、乃木坂46の生駒里奈を絶賛。生駒の撮影の感想として「天真爛漫な子に終始振り回されるというシチュエーションが大好きです」「こんな妹がいたらいいなあ…という妄想も、広がってしまいました」とつづっている。カメラを通してコンプレックスを克服しても、結婚しても、なお童貞の心を忘れない。青山の写真が人気を集めるのは、もしかするとこの童貞イズムにあるのかもしれない。