パソコンの本と一緒に勧められたのは『ぐりとぐら』? 2021年本屋大賞第2位に輝く大人気小説『お探し物は図書室まで』が待望の文庫化

文芸・カルチャー

公開日:2023/3/14

お探し物は図書室まで
お探し物は図書室まで』(青山美智子/ポプラ社)

「2021年本屋大賞」第2位に輝き、発行部数25万部以上を誇る人気小説『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)。その文庫版が、2023年3月2日に発売された。同作を手がけるのは、デビュー作『木曜日にはココアを』(宝島社)で「第1回宮崎本大賞」を受賞し、最新作『月の立つ林で』(ポプラ社)で「2023年本屋大賞」にノミネートされた作家・青山美智子さん。彼女が贈るあたたかな感動作の内容とは――。


 今回文庫化された『お探し物は図書室まで』は、人生に悩める人びとがふと立ち寄った小さな図書室の司書さんに導かれ、明日を生きる活力を取り戻していくハートウォーミング小説。ストーリーは全部で5つの章に分かれており、婦人服販売員の朋香、家具メーカー経理部の諒、元雑誌編集者の夏美、ニートの浩弥、定年退職した正雄の5名がそれぞれ物語の語り手となっている。

 たとえば第1章の語り手である朋香は、総合スーパーの婦人服売り場で働いている21歳の女性。なんとなく今の会社に入り、なんとなく今を生きる彼女は、やりたいこともなければ楽しいことがあるわけでもない。そんな自分を少しでも変えようとコミュニティセンターのパソコン教室に通い始めるのだが、その帰り際に訪れた図書室で彼女は司書の小町さゆりと出会い、そして声をかけられた。「何をお探し?」と――。

advertisement

 その問いに対して、朋香が返した言葉は「パソコンの使い方が載っている本」。しかしなぜか小町がプリントアウトしてくれた紙には、パソコン関係の書籍に並んで『ぐりとぐら』の文字が記載されていた。ここで言う『ぐりとぐら』とは、もちろん絵本の『ぐりとぐら』のことである。

 なぜ小町は『ぐりとぐら』を勧めたのか。この『ぐりとぐら』がどのように朋香の生きる活力に繋がっていくのか。思いもよらない本のセレクトが悩める人びとの背中を押すきっかけとなっていく。そしてそれは作中の登場人物だけでなく、読み終える頃には読者も心の一番固まった部分が優しくほぐされていることだろう。

 現に同書を手に取った多くの読者が感銘を受けているようで、各サイトのレビュー評価も軒並み高評価を獲得している。SNS上でも「心が動かされた。そしてもう一度読み返したくなった」「仕事に少し疲れたと思う人が読むと思わず泣いてしまうかも」「読み終えた後に自分の生き方も悪くないかもと思えるようになった。本当に出会って良かった一冊」「何度も何度も泣いた。これは働く人すべての心に刺さるわ…」といった絶賛のコメントが続出していた。

 多くの人を虜にした『お探し物は図書室まで』。その内容が気になる人は、ぜひこの機会に同書を手に取ってみてほしい。

あわせて読みたい