ファン必読! 『平成仮面ライダー』の脚本家らが執筆したスピンオフ小説

2013/1/7

 平成仮面ライダー12作品が講談社キャラクター文庫として続々と小説化されている。平成仮面ライダーは石ノ森章太郎の没後に制作されたシリーズで2000年から放映された『仮面ライダー クウガ』が第一弾。小説版も『クウガ』から発売される予定だったが、現在、発売が延期されているため、『小説 仮面ライダーカブト』(米村正二:著、石ノ森章太郎:原著/講談社)、『小説 仮面ライダーW~Zを継ぐ者~』(三条 陸:著、石ノ森章太郎:原著/講談社)、『小説 仮面ライダーオーズ』(毛利亘宏:著、石ノ森章太郎:原著/講談社)の3作品から発売された。

 平成仮面ライダーといえば、現代的でダークな世界観と、深みのある大人向けストーリーで熱狂的なファンに支持される超人気シリーズ。子ども向けの便乗ノベライズならファンは納得しないだろう。しかし、今回の小説シリーズはけっこう本格的だ。なにしろ小説化を手がけるのはテレビシリーズの脚本を担当したメインライターたち。物語の世界観や人物像を生み出したオリジネーターが、自らスピンオフ作品を創作するわけだから、本編では描ききれなかった心情や緻密な設定など、ファンには知りたかったことがてんこ盛りなのである。

 たとえば、『小説 仮面ライダーカブト』では、主人公の天道総司が仮面ライダーとなる前の14歳から始まる(テレビシリーズ本編では21歳という設定)。さらに、地球外生物ワームとの最終決戦のあと、仮面ライダーガタックの加賀美新が日下部ひよりを追ってタイのバンコクからインドのバラナシへと旅するというスピンオフストーリーも楽しめる。カオサン通りやガンジス河など、バックパッカーには馴染みの場所を舞台とした自分探しの旅行記を読むような、なんだか不思議な雰囲気だ。戦いのあとにクールダウンするには、たしかに一人旅に出たくなる気持ちもよくわかる。

 『小説 仮面ライダーW~Zを継ぐ者~』は、本編では主人公の翔太郎視点だったが、小説版はもう1人の主人公・フィリップ視点で物語が進行。映像では表現しきれなかった登場人物の心情がこまやかに描かれ、ハードボイルドタッチの推理小説としても楽しめる内容だ。本編の雰囲気がうまく再現されていて、ファンとしても納得の小説化と言えるだろう。

 『小説 仮面ライダーオーズ』では、本編の設定にあった800年前の出来事がアンク(本編で主人公に協力する腕の怪物)を主人公として描かれる「アンク編」、主人公・火野映司が本編のあとに中東を一人旅する「映司編」など、知られざる『オーズ』の過去・未来を読むことができる。本編では登場しなかったオリジナルキャラも登場し、新たな広がりを生み出している。

 以上の3作品は、いずれも小説家によるノベライズではないため、「小説としてはもの足りない」という声も一部にあるものの、そこは映像原作の強みで、登場人物の台詞を読むだけでも自然と映像が頭に浮かんでくる。むしろ過度な描写はこうした映像作品の小説化には不要なのかもしれない。そして何より本編の設定を知りつくしたメインライターが書くのだから、スピンオフストーリーも違和感なく読めることがファンにとっては嬉しいかぎり。本編で謎だった設定が解き明かされていくのは、ちょっとした快感だ。

 今後、2013年1月31日に『小説 仮面ライダー龍騎』(井上敏樹:著、石ノ森章太郎:原著/講談社)と『小説 仮面ライダーアギト』(岡村直宏井上敏樹:監修、、石ノ森章太郎:原著/講談社)、2月28日に『小説 仮面ライダーファイズ』(井上敏樹:著、石ノ森 章太郎:原著/講談社)と『小説 仮面ライダーキバ』(古怒田健志:著、井上敏樹:監修、石ノ森章太郎:原著/講談社)など、その他の平成仮面ライダー作品も順次、発売されていく予定。平成仮面ライダーファンならば、コンプリートしたくなるはず。ヒーローものを活字で読むというこれまでになかった読書体験が得られるかも。

文=大寺 明