鉄拳だけじゃない! 才能あふれるアーティスト芸人たち

芸能

2012/12/28

 「お笑い芸人って頭が良くないとできないんだよ」―― 昔、そんな話を聞いたことがある。数分のうちにテンポよく言葉を繰り出して笑いを取り、とっさに状況を判断してツッコミを入れたりボケたりしなければならないのだから、確かに賢い人でないと務まらないかもしれない。賢い人というのは何でもソツなくこなせる人だ。言い換えれば、幅広い能力がある人。

 お笑い界でマルチな才能を持つ芸人と言えば、ビートたけし。俳優や作家、芸術家としても活躍する一方、映画監督では“世界のキタノ”と称され、お笑い以外の活動でも大成功を収めている大御所である。また、ドラマや映画で活躍している“俳優芸人”も多い。雨上がり決死隊・宮迫博之はもともと役者志望だけあって、ベテラン俳優たちに勝るとも劣らない演技力を見せつけている。ドランクドラゴンの塚地武雅は、佐々木蔵之助とW主演した『間宮兄弟』(江國香織/小学館)で、多数の映画新人賞を受賞した。そして小説を出版した芸人も数知れず。爆笑問題・太田光『文明の子』(ダイヤモンド社)・『マボロシの鳥』(新潮社)、インパルス・板倉俊之は『蟻地獄』(リトル・モア)『トリガー』(リトル・モア)、小沢一敬『でらつれ』(講談社)にアンジャッシュ・渡部健『エスケープ!』(幻冬舎)、品川庄司・品川裕による『ドロップ』(品川ヒロシ/リトル・モア)、劇団ひとりの『陰日向に咲く』(幻冬舎)……。

 そんな才能豊かな芸人たちの中でもにわかに注目を集めているのが、絵の才能を持った“アーティスト芸人”たちである。まずは一組の男女が出会いから最期までの半生を描いたパラパラ漫画『振り子』がネット上で話題となった鉄拳。Youtubeでの動画再生回数は実に300万回を超えているそうだ。イギリスのロックバンド「MUSE」の公式PVにも採用され、世界中から感動の声が寄せられている。その原画約1500枚を再構成して書籍化されたのが12月7日に発売された『振り子』(小学館)である。本書では、動画では見られないイラストの細部まで心ゆくまで眺めることができる。男の苦悩、どうにもならない感情や心の声を優しいタッチでうまく描き出しているところが共感を呼んでいるのではないだろうか。

 また、もう1人紹介したいのがキングコングの西野亮廣。彼は以前に『グッド・コマーシャル』(幻冬舎)という小説も発表している。11月に発売された絵本『オルゴールワールド』(にしのあきひろ/幻冬舎)は、原案がタモリ、翻訳がチャド・マレーンという芸人によって作り上げられた作品で、その完成度の高さに称賛の声が続々と上がっている。世界をつなぐ“奇跡”を黒いペン1本で描き上げた繊細なイラストは独特の世界観がある。大人が楽しめる絵本である。

 男性芸人ばかりではない。女芸人では、天才的な手芸の技術を持つ光浦靖子が手芸本を出版。『男子がもらって困るブローチ集』(スイッチ・パブリッシング)には、彼女が作った羊毛フェルトを使ったブローチの作り方や作品が、エッセイとともに面白おかしく紹介されている。彼女の作品はどれもカラフルでメルヘンチック。小学校3年生の時から磨き続けたその腕前とセンスに、男子はいざ知らず、女子は絶賛の嵐だ。

 お笑い芸人という表の顔を持った彼らの秘められた才能にはあらゆる可能性が感じられる。これからどんな才能を持つ芸人が登場するのか、今後も楽しみだ。

文=廣野順子(Office Ti+)