肩身の狭い喫煙者のための“喫煙サバイバル術”

アーティスト

2013/1/5

 駅のホームやタクシーが喫煙可だったのも、いまは昔。公共機関や街のカフェ、ホテルでも全面禁煙を謳う場所は増加中。一方で嫌煙家も増え、愛煙家の肩身は狭くなるばかりだ。そんな人々たちに向けて、最近発売された本がある。タイトルもずばり『スモーカーズ・サバイバル・マニュアル』(片岡 泉:著、寄藤文平:イラスト/マガジンハウス)。本書には、「社会からいわれなき迫害を受けることなく、他人から迷惑と後ろ指を指されることなく、(中略)自分自身が健康リスクに怯えることなく、おいしい一服を確保するため」に必要な知恵と工夫が書かれている。

 まず、何はともあれ重要なのは「安全な場所を確保する」こと。だが、喫煙所なら安全、とは限らない。たとえば、駅周辺のスタンド灰皿などは多くの喫煙者が集まり大量の煙を発生させるため、通行人から「ニコチン中毒者の巣窟」と白い目で見られがち。そんな窮屈な思いをしないために、本書は「通行量の少ない喫煙所を探しておくこと」を指南。「東京灰皿」や「喫煙所マップ」などの無料アプリを活用し、最低限の情報を確保することが「安全なスモーキングの第一歩」だという。そして、喫煙OKの「ホームグラウンドカフェ」を確保するのも、ゆっくり安心して一服するための基本。禁煙席は空いているのに喫煙席は満席……というケースも多いので、カフェの選択肢は広げておくのがベター。ノマドワーカーならぬ「ノマドスモーカー」を目指すのだ。

 さらに本書は、シチュエーション別の喫煙法も紹介。「会社の喫煙ルームに上司が入ってきた場合」は、“そそくさとたばこを消し、慌てて退出する”のは感じがあまりよくないもの。そのため、「軽い話題で、コミュニケーションをとる」のが正解。上司がたばこを吸ってるあいだは2本目に手を出してもOKだが、上司がたばこを吸い終わったら、そのタイミングで火を消し、一緒に席に戻ろう。このとき「打ち合わせを終えたような顔つき」を心がけるのも忘れずに。

 また、喫煙者でなくても頭が痛いシチュエーションといえば、スモーカーとノンスモーカーがいる会社の飲み会の幹事になったとき。とくに、上司などの「キーマン」が2人以上いて、喫煙者と非喫煙者だった場合だろう。そういうときは「煙は、煙をもって制する」。焼肉屋や焼き鳥屋などの煙の多い場所を選ぶといいらしい。煙のニオイも強く、換気もしっかりされているので、たばこの煙もあまり意識されずにすむというのだ。あと、煙のニオイといえば、「彼女が明日、自分の家に遊びに来る場合」も要注意。部屋の換気を徹底し、カーテンを洗って布団を干す。もちろん、部屋の壁も水拭き。消臭剤や脱臭剤を部屋の四隅に置き、彼女の到着前にはアロマオイルやお香でいい香りを満たそう。

 そして、重要なことがもう1点、「リスクをチェックする」ことだ。なかでも、早期発見が難しいX線による「肺がん検診」ではなく、CTによる「肺ドック」がオススメ。本書でも「スモーカーの方がより自分の健康をケアしている。リスクをチェックしている。そういうスモーカーが増えることを望んでいます」と書いているが、たしかにそうすることで、さらにおいしくたばこを吸えるはずだ。

 たばこを吸わない人にたばこの歓びを説明しても、煙たさや、何より受動喫煙のリスクもあって、理解してもらうのは到底難しい。“スモーカー=社会の迷惑”というレッテルは、喫煙者がどんなにルールやマナーを守ってもはがれそうにないのが現実だ。著者は、締めの文章で「そろそろ、開き直ってしまいましょうか」と前置きした上で、「個人の自由を、社会が迫害するのはおかしい。私たちは、より多く税金を払っているんだ」と吐露しているが、この開き直りが「得策ではない」のも重々承知しているよう。だからこそ「スモーカーで、すいません。迷惑だったら、すいません。と、頭を垂れるふりをしながら、したたかに、生きのびることを、私は選びます」と書いている。

 おいしい一服を獲得するために必要なのは「正確な状況把握と想像力」。そのための知恵を、スモーカーの人々は本書で蓄えてみてはいかがだろう。