今年も熱い! 駅伝を100倍楽しむためのマンガ

公開日:2013/1/2

 年末年始の風物詩と言えば、やはり駅伝だろう。この時期になると、全国高校駅伝やニューイヤー駅伝とも呼ばれる全日本実業団対抗駅伝、箱根駅伝や都道府県対抗駅伝など、あちこちでたくさんの駅伝大会が行われる。普段は陸上やスポーツにあまり関心のないという人でも、お正月の箱根駅伝だけは毎年欠かさずに見るという人もいるはず。それほどまでに日本人の心を惹きつけ、熱くさせる競技。そんな駅伝の魅力が、マンガでも味わえちゃうのだ。

 2012年11月24日に2巻が発売された『群青』(坂本 虹:著、桐原いづみ:著/スクウェア・エニックス)は、高校駅伝に出るため、ケニアからはるばる帰国した少女・蓬原 道が主人公。そして、帰宅部で何をやっても続かなかった少年・新道真直が競走部の一員として駅伝の全国大会出場を目指すことになる『BE DASH!』(棚橋なもしろ/講談社)。どちらも、走ることが大好きな主人公たちが、高校駅伝の聖地・都大路を目指して努力する姿を描いている。そこで、これらの作品から駅伝マンガの魅力を探ってみようと思う。

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 まず、駅伝マンガの魅力と言えばなんといってもタスキをつないでゴールを目指す彼らの絆。『BE DASH!』に出てくる競争部は、最初は楽しく走れればいいだけの部活だった。しかし、真直が入部したことでみんなの気持ちが変わる。グランドの使用権と部の存続をかけて野球部と戦った駅伝対決では、本来1区を走るはずだった真直がスタート時間に間に合わず、代わりにキャプテンである鞠名淳平が走ることになった。そして、その差がどんどん引き離されても決してあきらめず、真直が戻ってくることを信じて部員の5人がタスキをつなぐのだ。その後、上を目指すためにコーチを迎えて他校との合同練習もこなすようになる。ただ仲良しなだけじゃなく、同じ目標を目指す仲間ならその絆が深いところで結ばれるのは当たり前だろう。

 一方、『群青』の主人公である道が通う音無女学館には、実は陸上部も駅伝部も存在しなかった。そして、彼女が都大路を目指すためにはまず1週間で5人の部員を集めるところから始まる。自由な校風である音無女学館では、放課後は遊びや習い事のために時間を使う人が多く、部活をやっている人たちはそもそも中学時代からその部活で実績を積んだ人ばかりなので、いきなり駅伝部を作りたいと言っても入ってくれそうな人など1人もいなかった。しかし、ビラをまいたり、一生懸命勧誘することで徐々に部員が集まっていく。そうやって説得し、お互いに信頼関係を築いて一から集めた仲間なら、ちょっとのことでは解けない強い絆が生まれるはず。

 また、他のスポーツ競技のように特別なスキルや経験年数によって力の差が出ることがほとんどないので、運動が苦手な人や初心者からでも始められるという点も大きなポイントだろう。実際、『群青』では、初めて駅伝部に入部した高瀬田鶴子は、跳び箱も飛べないし逆上がりもできない。自転車だって乗れないし、走るのも遅いという典型的な運動音痴だった。『BE DASH!』の真直にしても、小学生の頃から毎日走ってはいたものの、部活に入ってきちんと練習していたわけではない。やる気さえあれば誰だって始められるし、毎日練習を重ねて自分が努力した分だけ成長していけるのも、駅伝ならではなのかもしれない。

 そして、チームプレーであるのに1人1人の責任が大きく、自分次第でいくらでも順位が変動していくのも駅伝の魅力だ。『BE DASH!』で野球部とおこなった駅伝対決では、真直の代わりに急遽1区を走ることになった鞠名がアップ不足で波に乗れなかった。しかし、アンカーを走る真直は2分あった野球部との差を一気に縮めてしまうのだ。

 それは『群青』でも同じ。かつて1年生で高校駅伝のアンカーをつとめたエース・宇賀神尚見は、8位で受け取ったタスキを1位のランナーとわずか数十センチの差まで押し上げた。その時に作られた記録は、駅伝を辞めて10年経っても破られることなく残されているのだ。

 他にも、怪我や体調を崩して倒れてしまうこともあるし、本当に最後まで何が起こるかわからない。それも、駅伝の醍醐味だ。今年は、駅伝の魅力がたっぷり詰まったマンガとともに、駅伝で心燃やしてみてはどうだろう。