三浦しをんも参戦!異色の腐女子対談

公開日:2013/1/9

 直木賞受賞の映画化作品『まほろ駅前多田便利軒』に引き続き、『まほろ駅前番外地』のドラマが1月11日からスタート、また、2012年本屋大賞受賞作の『舟を編む』の映画公開も4月に控えている作家・三浦しをん。『ダ・ヴィンチ』2月号では注目の作家・三浦しをんを大特集。なかでも注目は、みずから参加した異色の腐女子対談だ。BLを激しく愛読し、BL目利きとしても知られる三浦しをんが、芸人・サンキュータツオ、BL小説家・松岡なつき、自身の担当編集者という選りすぐりのBL好きを集めて趣味全開トークを披露している。

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タツオ BLって「使用前」「使用後」みたいに、相手がいたことでどう変わったかが萌えポイントですよね。
三浦 そうそう。男性が苦悩した末に、今までの自分を捨ててあなたのために新しい自分になりますっていう、その様にすごくエロティシズムを覚えるんです。でも男女の恋愛を通して、男性が変化する様を書くのってすごく難しいんですよね。私は書けないし、そういうマンガや小説をあまり見たことがない。
松岡 私も男女ものでは書けないと思います。
三浦 あるとしたら、女の人のせいで悪く変化する、っていうストーリーですよね。悪女に翻弄されましたという。
松岡 男の人にとって恋愛は、大事だけれど一番ではないからでは? 一番大事な仕事をさしおいて、恋愛で崩れてしまった男、というような先入観で書かれてしまう。
タツオ 男はプライドが高いから、変化させられるなら女性がすごく強いとか、ものすごくきれいで手が届かない存在じゃなきゃいけなくなる。
大川 あとは『マイ・フェア・レディ』みたいに、社会的な地位のある人が小娘の純粋さみたいなところに触れて「はー、心がちょっと洗われた」というパターンが多いですよね。
三浦 それって変化ではなく単にリフレッシュなんですよ。風呂に入ってさっぱりした、くらいの(笑)。そうではない、男性の変化がちゃんと書かれているから、BLを読むんですよね。
タツオ 僕、あちこちでBLの話をしているのでゲイだと思われがちなんですが、そうではなくて。「女性として」BLを読んでいる感じなんですよ。
三浦 女性として、とは?
タツオ 「乙女回路内蔵」って僕は呼んでるんですけど。男女の恋愛ものだと女の子を男性目線で見ざるを得ないんですが、男性二人の恋愛だと性から解放されて、他人の恋愛を自由な気持ちで読めるんです。
三浦 まさに乙女回路! 通常、BLを読んだ男性はこう言うんですよ。「俺、やるのもやられるのも無理だわ」って。
タツオ マジすか!
三浦 なんとか自分を投影させようとしちゃうんでしょうねえ。
松岡 以前、ミュージカル監督が言っていたんですが、ミュージカルっていきなり主人公が愛を歌い出すので、現実感はないですよね。でも観客は感動して涙を流したりする。BLもそれに近いものがあると思う。お約束、様式美といいましょうか。
タツオ 感動させたいなら普通のお芝居でやればいいじゃん、って言う人もいるけどそうじゃない。だって「歌って踊りたい」んですもん。BLも「男同士が書きたいんだよ!」っていうことですよね。ロボットアニメを好きな人が、なんでこの世界にロボットがあるの?と問わないのと一緒です。男同士が恋愛する世界を認めなよ! って思う。
松岡 お約束を乗り越えられる人と、どうしても乗り越えられない人がいるんでしょうね。

取材・文=門倉紫麻
(『ダ・ヴィンチ』2月号「三浦しをん大特集:三浦しをん趣味全開! 腐女子座談会」より)