『悪の華』アニメ化で話題! 押見修造“ヒリヒリ青春マンガ”の魅力とは?

マンガ

更新日:2014/2/8

 今年の春にアニメ化されることが決まり、話題となった『悪の華』(押見修造/講談社)。これは、出来心で大好きなクラスメイト・佐伯奈々子の体操服を盗んでしまった少年・春日高男が主人公。そして、それをクラスの嫌われ者・仲村佐和に見られてしまったことから物語が始まる。

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 そんな『悪の華』を手がける押見修造の作品には、どれも心をひりつかせるような思春期特有のもどかしさが詰まっているのだ。

 『惡の華』の高男は、ボードレールという詩人を愛する文学少年だった。「ボードレールを理解できる人間がこの町に何人いる!?」「この本には…闇の感情が渦巻いてる この町にいる平凡な奴らには一生理解できないような哲学が!」と思いながら、自分は他の人とは違う。自分のことを理解できる人なんてこの世には存在しないと思っているような。

 一方、そんな彼を脅して「春日くんのそのまんまが出たぐっちょぐちょの作文が読みたかったの!!」「ズブズブのド変態でしょ!!」とわめく佐和もまた、上辺だけを取りつくろって生活している人のことを見下して、嫌っているような少女だった。自分が変態だなんて認めたくない少年と、自分だけが変態だなんて思いたくない少女。そんな思春期の子供たちなら誰もが抱く感情を、“変態”という切り口から描いている。

 また『ぼくは麻理のなか』(押見修造/双葉社)では、毎日女子高生を尾行していた大学生・小森功が登場する。しかも、ある日目覚めると、なぜか自分がその女子高生になってしまっていたのだ。大学進学を機に群馬から上京してきた彼は、夢や希望であふれていた。しかし、大学に入学しても誰かに話しかけてもらえるのを待つばかりで、気づいたら誰1人友達などいない状況になってしまっていた。最初はどうにか頑張って通っていたが、2年になった頃ポッキリと心が折れてしまい、学校に通うのをやめた。そんな彼が見つけた唯一の救いが、毎日決まった時間にコンビニにやってくる“コンビニの天使”を尾行することだったのだ。ただ好きな相手を見つめていたいだけだったのに、相手に迷惑をかけてしまったことに戸惑い、かといって彼女になりきって生活していくこともできず、「助けて」と泣きながら彼女のクラスメイトにすがりつく。そのなんとも情けなく頼りない姿には、イケてない男子大学生のリアルが詰まっている。

 そして、押見が自らの経験をもとに描いたという『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(太田出版)では、吃音症の女子高生・志乃ちゃんが登場する。自己紹介の時に自分の名前が言えなかったことで、クラスのみんなの笑いものになってしまった彼女。だけど、そんな彼女のことを笑わずにいてくれて、バンドを組もうと誘ってくれたクラスメイトの加代によって救われる。そして、音痴なことをからかわれた加代を守るため、つっかえながらも一生懸命助けようとするのだ。足りない部分を補いながら、必死にもがき、少しずつ大人になっていく彼女たちの姿には、彼らにしか放てない輝きがある。

 思春期の頃は、自分が他の人と違うことに悩んだり、逆にそのことで優越感に浸ることもある。そんな彼らのもどかしさややるせなさといったモヤモヤした心を、許し、認めて肯定してくれるようなこれらの作品は、痛いほどにリアルだからこそ人々を惹きつけるのだろう。