中学入試によく出る作家は誰?

更新日:2013/2/1

 いよいよ受験シーズンの到来。国語のテスト問題といえば、古典や名作からの出題というイメージかもしれないが、最近の人気作家の作品からの出題も少なくないようだ。

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毎年日能研から発表される「中学入試によく出題された作者・作品」のランキングだが、今回2010年~2012年までの3年間でよく出題された作者・作家のベスト20をまとめた冊子が配布されている。そこで、今回はその結果も踏まえながらどんな作品が出題されやすいか。どういったものをチェックしておけばよいのか。その傾向と対策を探ってみよう。

 まず、12歳の少年少女を主人公にした作品は要チェック! 中学入試に出題される作品には、受験生と同じぐらいの年頃の少年少女が抱えている問題や彼らが悩みながら成長していく過程を描くものが多い。『西の魔女が死んだ』(梨木香歩/新潮社)や『サナギの見る夢』(如月かずさ/講談社)のように主人公が12歳の時を描いたものはもちろん、『十二歳』(椰月美智子/講談社)や『自転車冒険記―12歳の助走』(竹内真/河出書房新社)のように、タイトルにまで“12歳”と使われている作品も。“12歳”というキーワードに引っかかる作品は、読んでおくといいかもしれない。

 それに、家族関係や家庭環境が複雑なものも押さえておいたほうがいい。子どもの成長や揺れ動く心情を描けるからか、『野川』(長野まゆみ/河出書房新社)や『ポニーテール』(重松清/新潮社)のように両親が離婚していたり、『しずかな日々』(椰月美智子/講談社)や『おじいちゃんが、わすれても…』(大塚篤子:著、こころ美保子:画/ポプラ社)のように祖父母のもとで生活している作品はかなり多いのだ。

 そして、受験する学校が男子校か女子校かということもポイントになってくる。やはり、男子校の問題では少年を主人公にしたものが、女子校の問題では少女を主人公にしたものが多くなっている。そして、男子校では『たまごを持つように』(まはら三桃/講談社)のように恋愛をテーマに入れた作品が出題されることが少ない。自分が男子校、
あるいは女子校を受験するつもりなら覚えておくといいだろう。

 作家から探すなら、まずは重松清。『きみの友だち』(新潮社)『きよしこ』(同)『ポニーテール』(同)など、重松作品はもはや中学入試の定番だが、それ以外にも、チェックしておくべき作家たちがいる。

入試に使われる作家は児童文学出身の作家が多いのだが、とくに注目すべきなのが「講談社児童文学新人賞」の出身作家。椰月美智子や森絵都、草野たき、如月かずさ、まはら三桃といった出身作家たちがランキングにズラリと名を連ねている。残念ながら今年の受賞者はいないようだが、この賞出身の作家の作品が出題されることは多いので、彼らの作品を読んでおけば傾向や特徴がつかめるはず。

 一方、論説文でよく扱われる3大テーマは言語、日本の文化と自然や環境問題。実際、言語学者である外山滋比古の作品や、時代や文化によって異なる“美しさ”をテーマにした田中真知の『美しいをさがす旅に出よう』(白水社)、動物学者の日高敏隆が環境問題について語った作品などが上位にランクインしている。

 そして、日本の“今”の社会に対してどれほどの関心と知識があるかを問うためのものも多い。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や近年の食糧問題、農業ブームの影響もあってか、この3年間では特に農業や食料自給率にまつわるものが多かったようだ。中学入試によく出題された作品には宇根豊の『農は過去と未来をつなぐ―田んぼから考えたこと』(岩波書店)や、小泉武夫の『いのちをはぐくむ農と食』(岩波書店)がそれぞれランクインしていることからもわかるだろう。

 そのポイントに当てはめてみると、今年は山中伸弥教授がiPS細胞でノーベル生理学・医学賞を受賞したので、生命倫理や生態系に関する作品が出題されるのではないか? 彼の著書であり、中学生でも読めるように書かれたという『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』(講談社)は、読んでおいて損はないだろう。またランクインしている2冊はいずれも岩波ジュニア新書だから、こうしたテーマの岩波ジュニア新書も要チェックだ。

 他にも、日能研のWebサイトにある「読書ガイド」で入試によく出る作品と作者のバックナンバーが紹介されている。その中から、上記のポイントを踏まえた作品を読んでおくのもいいだろう。そうすれば、きっと受験もバッチリ!