その日、受賞者たちの心境は? 第148回芥川賞・直木賞会見レポート

2013/1/17

 16日、第148回芥川賞・直木賞(日本文学振興会)の選考が行われ、芥川賞に黒田夏子氏『abさんご』(早稲田文学)、直木賞に朝井リョウ氏『何者』(新潮社)と安部龍太郎氏の『等伯』(日本経済新聞出版社)が選ばれた。

選考の会場となったのは、東京・築地の料亭「新喜楽」。はじめに芥川賞の結果が発表され、選考委員の堀江敏幸氏が講評をおこなった。

芥川賞 黒田夏子『abさんご』

「今回の選考は議論としても非常に楽しく、濃密な時間だった」と振り返った堀江氏は、受賞した黒田夏子氏の『abさんご』について、「横書きを用いることで、ひらがなの暴力性があらわれ、(読者を)何度も文章の前に立ち止まらせる力のある、非常に洗練された美しい作品である」と評価し、話題となっていた最年長受賞者であることについては、「不思議と話題になることはなかった。作品についてはむしろみずみずしいという評価もあった」と語った。

「(私の作品のように)他にもたくさんの隠れている作品を見つけられるきっかけになるのなら、それが私の役割なのかもしれないと思い、喜んでお受けいたしました。生きている間に見つけてくださって本当にありがとうございます」

受賞会見で黒田夏子氏は笑顔まじりにこう語った。現在75歳の芥川賞史上最年長の受賞者。30代までは小説を各文学賞に応募していたが、自分の書きたいものを書いているうちに、いわゆる普通の小説のかたちに収まらず、以降は応募しなかったという。しかし、70歳を過ぎてから、多くの人に自分の作品を届けたいと思うようになり、小説の形式自体を問わない自由な雰囲気の「早稲田文学新人賞」に応募。選考委員の蓮實重彦氏の絶賛を受けて、受賞することとなった。

abさんご』は、横書きでひらがなを多用した文体が特徴的な作品。その独特な表現方法についての質問が記者会見では集中した。

『abさんご』作品冒頭部分(「WB」vol.025に掲載。PDF形式)

 「縦書きというだけでなんとなく文学的なムードをもってしまうという現状について、それを振り払ってしまいたいという思いがありました。漢字も、言葉の意味そのものを限定していくように感じ、言葉の元の語源をさかのぼりながら、豊かな広がりをもつことのできる、ひらがなを多用するようになりました」と自らの文体について語った。

 「1作を10年かけてつくるような書き方で」何度も推敲を重ねて8、9年もの歳月をかけて1作品を作り続けてきたという。今後は、これまで書きためた作品についても発表していけるようにしていきたいと語った。