第1回「笑う本棚大賞」は『醤油鯛』に

2013/1/21

 芥川賞・直木賞を筆頭に百花繚乱の文学賞。行政が主催するものや詩歌なども加えれば毎週のように候補者が一喜一憂し、新たな受賞者が誕生する計算だ。なぜこんなに多いのか。授賞までのシステムはどうなっているのか?
ダ・ヴィンチ』2月号では、『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』で知られるライター・北尾トロが、その裏側を徹底取材。そのなかでノンフィクション分野の賞が手薄と気づいた北尾は、自らの手で“笑える”ノンフィクション大賞を設立することに。

 ――転機となったのは前々号でやった書店フェアの実践。「笑う本棚」フェアと題しておすすめの本を推薦し、出版社やジャンルを横断する品揃えを狙ったものだ。スタート直後から開催場所の三省堂書店神保町本店4Fに大勢の客がきてくれ好成績を収めることができたのだが、サービスとして作成した選書リストを眺めていて、あれっと思ったのである。これは言ってみればレポ賞の候補作一覧じゃないか……?

 選者の幅も広く、豊﨑由美や杉江松恋は書評ライターだし、霞流一は小説家、エッセイスト平松洋子にマンガ家のやまだないと、妄想工作家の乙幡啓子もいる。笑いにこだわる下関マグロや宮田珠己がいて、トロイカでもおなじみの日高画伯、選考委員3人(えのきどいちろう、新保信長、北尾トロ)とレポ副編集長も参加している。しかも選ばれたのはクセのある本が多い。みんな、当たり前の本じゃつまらないからと腕によりをかけてヒネリをきかせ、さまざまな質の笑いでバラエティを出しており、見過ごされがちな作品や小さな版元の出版物が中心となっているのだ。賞のことなど意識せず選んだ本だが、ここから最優秀賞を選べばいいのでは。賞の名称も「笑う本棚大賞」でいいではないか。おいおい、これは名案だぞ。

 問題はどうやって選ぶかである。賞の性格上、小説を除外し、著者が故人のものを外しても数十の候補作が残る。有名作家の作品だからダメとか、マンガは不可なんてしたくない。

 悩んでいるとき、三省堂の担当者から売れ行きの中間報告が入った。すると、意外な本がナンバーワンを独走している。博物館研究員である沢田佳久さんの『醤油鯛』だ。駅弁などに入っている魚型の醤油入れを集め、系統分類学的手法に乗っ取って図鑑に仕立て上げたもの。私も購入したが、専門家が持てる知識を動員して真剣にくだらないことをやっているので大笑いだった。同書の存在をフェアで見かけるまで知らなかったことも、発掘という意味がある。版元のアストラも賞にはあまり縁がなさそう。そして、なんといってもこの本を売れ行きトップにしたお客さんの眼力に唸ってしまう。賞を与えることに異存はない。この本は選者の一人である新保信長の推薦本だったので、残るはえのきどいちろうのみ。
「いやーすごいねこの本。わろた、わろた」
 やった、満場一致(3人だが)だ!
 が、果たして沢田さん、受賞を喜んでくれるだろうか。

 同誌では、文学賞の裏側取材から賞設立の経緯、そして第1回大賞の授賞式までをルポ形式で掲載している。

取材・文=北尾トロ
(『ダ・ヴィンチ』2月号「トロイカ学習帳」より)