人気上昇中のお仕事ラノベ ゲーム業界ものも登場!

更新日:2013/1/21

 最近、ラノベにおいて増えつつあるジャンルがある。それが、お仕事ラノベだ。なかでも、システムエンジニアの仕事について書かれた『なれる! SE―2週間でわかる?SE入門』(夏海公司:著、Ixy:イラスト/アスキー・メディアワークス)やアニメショップを舞台にした『フロムエース可愛すぎるクラスメイトとバイトするんだけど、何か質問ある? 』(尼野 ゆたか:著、瑠奈璃亜:イラスト/富士見書房)、アニメ制作についてわかる『アニメアライブ』(秋傘水稀:著、わだぺん。:イラスト/アスキー・メディアワークス)や声優の『ボイス坂 ~あたし、たぶん声優向いてない~』(高遠るい/集英社)など、オタク好みの仕事を題材にしたラノベが人気を集めている。そして、12月18日にはPCゲーム業界を舞台にした『やましいゲームの作り方』(荒川 工/小学館)まで発売された。

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 これは、やましい方のPCゲームのシナリオライターだった直海龍介が亡くなり、残った魂が高校生の息子・忍に乗り移って龍介がやりかけだったPCゲームを作るというちょっと不思議なファンタジーよりの業界ものになっている。作者の荒川工は、『このはちゃれんじ!』や『Lien ~おわらないきみのうた~』といった代表作で知られる、エロゲのシナリオライターでもあるだけに、よりリアルなゲーム業界事情も盛り込まれていそうだ。

 そこで、もしもゲーム制作のお仕事をするならどんな役割があるのかを、ゲーム制作におけるちょっとした豆知識も含めながら紹介していこう。

 まずは、直海や年齢不詳の穴水弥生が務めるシナリオライターから。彼らは話の大まかな流れを書いたプロットから、それをさらに詳しくして他の人に伝えるための筋書きと進行予定表を作る。OKが出れば、あとはひたすらテキストを作成していく。ちなみに、給料はだいたい1キロバイトあたりいくらというキロバイト単価計算か、ヒロイン1人あたりいくらというルート単価計算のどちらからしい。

 また、プログラマーの別所谷六実は新しいOSへの対応やバグの修正。グラフィッカーの嶋和ななおはひたすら彩色作業をしたり、演出を担当する桂はCGや音をどう表示するか決めてそれを設定していく。そんなふうに、いろんな人が役割分担しながら一緒に作り上げていくのだ。

 そして、ゲームに欠かせないBGMや効果音は、業者に頼んだり販売されている著作権フリーの効果音集からサウンドツールなどを使って自分の会社でなんとかしたりするそう。それでも足りないものは、実際にカンヅメのペットフードをぐちゃぐちゃ混ぜたり、いろいろと工夫しながら生音を録音してサンプリングしたりもするんだとか。

 また、PCゲームの声優さんはアニメのように同じスタジオでみんな揃って収録ということはあまりないそう。それぞれが個別で収録するので、Hシーンのセリフなんかは恥ずかしそうだ。また、もしも収録漏れしたセリフがあれば心の声として地の文にしたり、声優さんには内緒で他のセリフを切り貼りしてでっち上げたりもするんだとか。音やセリフ1つとっても、さまざまな工夫や苦労があるようだ。

 他にも、ゲームの完成を意味する「マスターアップ」や各社が工夫を凝らす「ゲームエンジン」などの専門用語についてもわかりやすく解説されている。

 荒川があとがきで「現実のソフトハウスはもっともっとシビアで真っ当で、物語の中で挙げた数字や名称、やり方なども業界の方から見れば「?」と思われるものが幾つかあります」と述べているように、『なれる! SE』ほどリアルで実用的なわけではない。しかし、パソコンゲームがどのように作られているのか。その雰囲気を味わうことはできるのでは? それに、各章のタイトルがエロゲのタイトルになっていたり、2巻には有名シナリオライターで作家の田中ロミオをモチーフにしたキャラも登場するようなので、エロゲ好きにはたまらない作品になりそうだ。『やましいゲームの作り方』から、今後も目が離せない!