一世を風靡したマニュアル本。実は時世を反映するタイトルが多い!?

更新日:2013/2/4

 今から20年近く前になるが、1993年に出版された『完全自殺マニュアル』(鶴見済/太田出版)は大きな話題になった。自殺の方法について、薬から首吊り、飛び降り他、様々な手段が紹介され、実行した際に苦しいか、あるいは死後の状態がきれいか、残された遺族に迷惑がかかるかなど、生々しい部分まで克明に突っ込んだ内容はこれまでにないインパクトがあった。また、この本が話題になったことで、『完全失踪マニュアル』(樫村政則/太田出版)や『人格改造マニュアル』(鶴見 済/太田出版)が出版されるなど、一般的なものとは一線を画するマニュアル本がちょっとしたブームになったのである。

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 ところが、最近のマニュアル本のタイトルを見ると、当時とはまた違った様子をかもし出している。“子犬の飼い方”や“最新式一眼レフカメラの撮影マニュアル”、“パソコンや携帯電話の活用方法”といった普遍的に需要があるものに混じって目についたのは、『冒険に出よう (U25サバイバル・マニュアル) 』(安藤美冬/ディスカヴァー・トゥエンティワン)や『元ひきこもりニートがリアルに教える! 脱ニート完全マニュアル』(地雷屋:著 石原まこちん:イラスト/メタモル出版)といった若者の生き方等について説いたもの、あるいは『「20代男子」戦力化マニュアル 「ほめる・しかる」で部下を劇的に伸ばす!』(齋藤直美/日本実業出版社)のように若者への接し方について解説したものなど、現代社会において若者をどのように活動させていくべきかを考えさせるものが並ぶ。

 また、その他にも『子どもの虐待防止・法的実務マニュアル』(日本弁護士連合会子どもの権利委員会/明石書店)、『DV・セクハラ相談マニュアル』(東京弁護士会両性の平等に関する委員会/商事法務)、『治療薬マニュアル』(高久史麿/医学書院)といった当事者にとっては必要性の高い切実なテーマを扱ったタイトルも多く、東日本大震災直後には、『女性のための防災BOOK』(マガジンハウス)や『食品の放射能汚染 完全対策マニュアル』(水口憲哉:編、明石昇二郎:編/宝島社)といった防災や放射能汚染の対策マニュアル本が数多く出たことも記憶に新しい。

 まさに悩みあるところに応える者あり…といったところだろうが、ある意味、現在の世相を反映しているものなのかもしれない。

文=キビタキビオ