防衛白書、養豚業、浄土真宗…「マンガでわかる◯◯」本いろいろ

更新日:2013/1/22

 難しい数学・物理の理論や、とっつきにくい昔の思想や物語をできるだけストレスなく自分のものにしたい──。そんな願いを叶えてくれるのが、中身がマンガで構成されている解説本や物語だ。理数系については『マンガでわかる』シリーズ(オーム社)が数多く刊行されており、文学系に至っては、国内外の文学から『孫子の兵法』などの思想本に至るまで多岐に渡って漫画化している『まんがで読破』シリーズ(イースト・プレス)、『ハムレット』などの名作をマンガ化した『マンガで読む名作』シリーズ(日本文芸社)、さらには1990年代前半にNHK総合にて『徒然草』や『更級日記』を現代風にアレンジして放送した番組の内容をマンガ化した『NHKまんがで読む古典』シリーズ(ホーム社)など、さらに多種に及んでいる。

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 これらの通称「マンガでわかる◯◯」本は、通常の活字本で「???」だった読者に十分配慮し、マンガの持つストーリー性をフルに生かす形で描かれている。

 たとえば、『マンガでわかる統計学』(高橋 信:著/トレンドプロ:著/オーム社)では、統計学をまったく知らない主人公の女子高校生・高津ルイが、マーケティング会社に勤務するルイの父の部下でイケメン若手社員の五十嵐の気を引きたいがために、統計学に興味があるフリをして家庭教師をお願いする…という導入から始まっている。当日になってルイの前に姿を現したのは、グルグルメガネのオタク系社員・山本でガッカリ…という小さなオチは入るが(実は山本もメガネを取るとイケメンであることが最後に発覚)、山本はなかなかの教え上手で、統計学に関する知識がまったくないルイに対し、彼女の好きなマンガやお菓子の話題を巧みに活用して統計の基本をゼロから教えていく、という流れだ。その中で、読者の疑問を代弁するように疑問をぶつけるルイと、それに回答する山本とのキャチボールがテンポよく進んでいく。

 また、文学系については、「NHKまんがで読む古典」シリーズこそ解釈や言い回しを現代風に思い切ってアレンジしているが、それ以外のシリーズはできるだけ原書に忠実なものを目指しており、絵柄や構成によって多少の個性は出るが、読者がスムースに物語に入っていけるよう、シンプルなのが基本だ。

 そして、この種の「マンガでわかる◯◯」本には、もっとマニアックなものが多数存在している。精神科医・ゆうきゆうの原作により、心の病についてギャグを多数盛り込みながら解説している『マンガで分かる心療内科』(ソウ:イラスト/少年画報社)や、防衛省が毎年発行している『防衛白書』からトピックとなるテーマを取り上げてマンガ化した『まんがで読む防衛白書』シリーズ(吉岡佐和子:著、防衛省:監修、MCH:イラスト/少年写真新聞社)、さらに、養豚業に関する仕事の内容をマンガで解説した『めざせ! 養豚場の星』(池田慎市:著、クシキノアイラ:著/緑書房)、筋肉の反応を調べながら精神との関係を調べて心身のバランスを改善するキネシオロジーを紹介する『心の声を身体に聴いてトラウマ解消! マンガでわかる! キネシオロジー入門』(齋藤慶太:著、源 ユイ:イラスト/BABジャパン)、仏教宗派の一宗派について詳しく解説した「わが家の宗教を知る」シリーズ(藤井正雄/双葉社)をマンガ化した『【コミック版】 うちのお寺は浄土真宗 通夜・葬式・日々のおつとめがマンガで分かる! 』(たかみやにか:著、拓人社:編集/双葉社)。他にも、出産・不妊治療、民法、webマーケティング、株式投資等々…。挙げたらキリがないほどだ。

 これらのよい点は、絵が多いことによりイメージでつかみやすいところ。比較的短時間で消化できるので、概要を早く知りたいという人にはうってつけといえるだろう。

 ただ、情報量という点においては、活字本に比べてどうしても不足するのは否めない。そこで、今まで事前知識がまったくなかったものを知りたいときに活用すると効果が高い。1度読んでおけば、ある程度の内容はつかめるし、そこでさらなる興味が湧いたら本格的に活字の解説書や原書にチャレンジすればいい。いきなり難しい本を読み始めるより、効率的に消化吸収できるのではないだろうか。