セックス・アンド・ザ・ローカル? 地方都市の恋愛観とは

恋愛・結婚

更新日:2017/4/13

 恋愛で起こるさまざまな問題をテーマに4人の女性がガールズトークを繰り広げる人気海外ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』。最先端のファッションやカルチャー、グルメなど、きらびやかな記号をまとって繰り広げられる恋愛模様は、舞台であるマンハッタンという大都市ならではのものだろう。

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 ドラマの舞台が、もしも日本の地方都市だったら…。国道沿いに巨大チェーンが立ち並ぶ“ファスト風土”を背景に、狭く閉じられた人間関係の中で繰り広げられる恋愛模様は、一体どのようなものになるのだろうか。

 「地方(ローカル)ガール小説」として注目されている山内マリコの小説『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎)は、地方都市に暮らす女子たちのガールズトークに耳を傾けているような感覚を味わえる1冊だ。

 主人公の異なる8つの短編からなる本書には、様々な“地方ガール”が登場する。震災を機に東京から戻ってきたライターに、好きでもない男子とダラダラ肉体関係を続けるフリーター、セックス談義に花を咲かせる処女の女子高生など…。彼女たちは変わりゆく地元の景色に嘆き、出会いの少なさにため息をもらし、東京という大都市に羨望の眼差しを向ける。

 大型のショッピングセンターに行けば大抵の物が揃う地方都市は、便利で暮らしやすい。しかし、そこに退屈を感じてしまった者には、ぬるま湯のような居心地かもしれない。

 “二十四時間のファミレスは、あたしたちと似たような境遇の暇な若者でいっぱいだ。ナイロンジャージにスウェットパンツの、引くほど行儀が悪いヤンキーカップル。ときめきを探している女の子、携帯をいじってばかりの男の子、テンションの低い倦怠期カップル。そんなくすぶった人々。若さがフツフツと発酵している音が聞こえる。(中略)みんな誰かに会いたくて、何かが起こるのを期待してるんだと思う。あたしだってそう”

 ここには、地方ガールたちが抱く行き場の見つからない欲求不満が端的に表現されている。タイトルの『ここは退屈迎えに来て』とは、そんな彼女たちの心の叫びだろう。全国の女子たちから「これは私の話だ!」と大きな共感を集める注目作、ぜひご一読あれ。

文=清田代表/桃山商事