神永学の新作、心霊探偵八雲に負けず劣らない超理系・ツンデレ捜査官登場!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/28

 「心霊探偵八雲シリーズ」で人気の作家・神永学

最新刊『確率捜査官 御子柴岳人 密室のゲーム』(角川書店)は超理系・ツンデレ捜査官が誘う取り調べエンターテインメントだ。

 主人公は、刑事としての勘や人の感情をとても大切にしている新米刑事・新妻友紀と、昨今問題となっている冤罪事件や裁判員制度の導入を受け、効率的で正確な取り調べの方法を検証するため、新設された“特殊取調対策班”にともに配属された御子柴岳人だ。
 
 大学の准教授で、数学の専門家の彼は長身、色白、真っ直ぐ伸びた鼻筋に切れ長の目という美形。だが口にはいつもチュッパチャプス、数学以外の話をすることを強要されると子どものようにダダをこね、門外漢の知識、ことに諺を使われるとキーッとなり……という、かなりの変人だ。

「僕の作品の登場人物の中で、一番おかしなやつ(笑)。数学的なアプローチから客観的な事件の真偽を計る理系キャラ・御子柴は、ひとクセもふたクセもある人物にしたいと、執筆中もどんどん入れ込んでいきました」(神長さん)
 “お前、救いようのないアホだな”と、言い放つツンデレぶりは、何と御子柴のチェスのお相手として本作にも登場する『心霊探偵八雲』シリーズの八雲に負けず劣らず。

advertisement

 以前からテーマにしたかったという冤罪、特に証言でしか裏が取れない痴漢事件などの問題もエンターテインメントの形を借りつつ、思うところを描きたかったという神永さん。御子柴が繰り出す理論の中で明らかになる真実やその裏に隠された人の想い、正義、葛藤。そしてラストには驚きの展開が待ち受ける。さらに並んで明らかになるのが、御子柴に隠された過去だ。

「御子柴がなぜ数学に固執し、偏った人物になってしまったのか。キャラを描く時はいつもそうですが、僕はそこを突きつめるようにしています。そして誰かと出会うことで、自分とは違う考え方や価値観に触れ、成長していく。そういう希望のある物語を書きたいんです」

 トリックや驚きを優先し過ぎて、犯行動機が納得できないミステリーは書きたくない。“なぜ、この人はこんなことをしてしまったのか”というところに必ず行き着く話にしたいと語る神永さん。本作では、容疑者や主人公2人をはじめ、何かを背負ってしまった登場人物それぞれのそうした心の錯綜がすとんと胸に落ちてくる。

「僕にとって、今までで一番チャレンジ感のあった作品。読者のみなさんには、八雲以上に厄介でクセのある御子柴に会いに来るつもりで、ページを開いてほしいですね。そして数学に興味を持つきっかけになれば……なんて、僕が偉そうに言うのもヘンですね(笑)。ぜひ肩の力を抜いて楽しんでください」

(ダ・ヴィンチ10月号 今月のブックマークEXより)