心を読まれるってどうなの? アニメも話題の『琴浦さん』

マンガ

更新日:2014/2/8

 今期からアニメが始まり、1話からの衝撃的なうつ展開で視聴者の度肝を抜いた『琴浦さん』(えのきづ/マイクロマガジン社)。主人公の女子高生・琴浦さんは、生まれつき人の心を読むことができたが、幼い頃の彼女は聞こえたことをなんでも口にしてしまったため、バケモノと呼ばれていじめられたり、母親に「こんな子産むんじゃなかった」と言われて捨てられてしまう。しかし、使いようによっては、好きな人が何を食べたくてどこへ行きたいのか、親や先生、上司が何を求めているかだってわかってしまうので、なんだか楽しそうな気もする。

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 では逆に、心を読まれる側はどうなのだろう? 好きな人や考えていること、自分の汚い部分も全部筒抜けだと思うと、やはりいい気持ちはしない。隠し事だってできないし、相手のことをバケモノ扱いして遠ざけたくなる気分もわかる。

 しかし、琴浦さんのクラスメイト・真鍋は違った。心を読まれると分かっていてもまったく気にせず、一緒にご飯を食べたり、休日に偶然出会っても声をかけてきてくれる。おまけに、琴浦さんをバケモノ扱いしていじめていたクラスメイトには「あいつが怖いのはお前の心が黒いからだ」と言い放つのだ。裏表のない彼は、そもそも心を読まれて困ることがあまりないらしい。琴浦さんには隠しても無駄だからとすべてさらけ出してくれるし、彼女のことを気に入っていることがバレても「あぁやべ聞かれた」と思うだけで、いつもと変わらない態度で接してくれる。

 それどころか、琴浦さんが心を読む能力を制御できないのをいいことに、わざとエロい妄想をしてからかったりして、心を読まれること自体を楽しんでさえいるのだ。その様子は、部活の先輩が思わずマネしてからかいたくなっちゃうくらい。そこまであけすけな真鍋だからこそ、琴浦さんも安心して自分の思っていることを素直に言えるようになったのだろう。もしクラスや自分の身の回りに心を読める人が現れても、何も悪いことややましいことがないのなら、怖がらずに心を開くだけでいいのだ。

 とはいえ、いくらやましいことがないとは言っても、すべて筒抜けでは困ってしまうこともある。たとえば、誕生日やクリスマスなどに何かサプライズをしたいとき。そんなときでも、真鍋は必死に九九の計算をすることで心を読まれないようにするのだ。琴浦さんだって真鍋が何か隠し事をしているのはわかっても、彼がいつもと変わらない態度でそばにはいてくれるから、悪いことや琴浦さんを傷つけるようなものではないと信じられる。だからこそ、一生懸命ごまかそうとする姿でさえなんだかかわいらしく見えるのだ。

 また、場合によっては伝えたい思いをより正確に、強く伝えることだってできる。琴浦さんが急に行方をくらませてしまったときも、真鍋は「守ってやれなかった」「会いたい」「帰ろうまた一緒に」という思いで必死に彼女を探した。そして、その痛いほど強い彼の心からの声が琴浦さんに直接伝わったのだ。単に「心配した」と口で言われるよりも、無意識にあふれていた心からの本音の方が、彼の思いをより正確に伝えてくれる。心を読まれることで、頭で考えて言葉にする以上のことを伝えることだってできるのだ。

 こんなふうに、心を読まれるのは案外悪いことばかりでもない。むしろ、本気で好きな人相手ならケンカも減ってラブラブになれるかも?