まだまだブームは続く…理屈&軽妙&熱血な西尾維新の世界

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/25

 2005年に世に登場して以来、今も人気を博している西尾維新の『化物語』(講談社)。その後『偽物語』『猫物語』など一連の続編に続いていく「(物語)シリーズ」は、『化物語』が2009年、『偽物語』と『猫物語(黒)』が2012年にアニメ化されている。

advertisement

 そのストーリーは、主人公・阿良々木暦と各物語ごとに登場するヒロインたちが、自身に憑依した「怪異」と対峙し、さまざまな手段でそれを祓っていく…というもの。メインヒロインの戦場ケ原ひたぎ、八九寺真宵、神原駿河、千石撫子、羽川翼ほか個性的な女子が登場するのが魅力のひとつだ。

 この「(物語)シリーズ」だが、小説では阿良々木の一人称による解釈や解説、つぶやきに近い長い語りが入ることが多い。アニメでは、背景に文章を羅列するサブリミナル的な処理で逃れたところもあるほど。たとえば、『化物語』からヒロインのひとり、羽川翼を紹介する一文ひとつとっても、「これがまた、如何にも委員長といった風情の女子で、きっちりとした三つ編みに眼鏡をかけて、規律正しく折り目正しく、恐ろしく真面目で教師受けも良いという、今や漫画やアニメにおいてさえ絶滅危惧種に指定されそうな存在なのである」(第1話ひたぎクラブより引用)という感じである。

 だが、この“理屈っぽさ”は、むしろ作品全体の魅力となっているようだ。阿良々木のひとり語りと同様、物語の大部分を占めているヒロインたちとの会話においても、時折長いセンテンスによる理屈のぶつかり合いが生じることがあるが、そのリズムが軽妙なせいか、実際の活字量ほどストレスにならない。スラスラと言葉が脳内を流れていく印象だ。その意味では、アニメを視聴済みであっても、一度小説を読んでみるのも一興だろう。

 また、怪異の話など聞きなれない理屈や説明が飛び交い、ときには理不尽な決断を下さねばならないような展開の中で、一見いい加減で、普段は斜に構えた理屈を発している阿良々木が、実は内に秘めいている芯の通った男気を見せることで物語が動くことが多いのも特徴。それにより、さながら清涼飲料を飲んだような「すっきり感」を得られるだろう。

 これは、西尾が手がけた作品で、他にアニメ化されたものにも共通しており、「刀を持たない剣士」こと鑢七花と美貌の奇策士・とがめが、伝説の刀鍜治・四季崎記紀が鍛えた12本の“刀”を求めて旅をする『刀語』(講談社)や、心技体すべてハイパーレベルのスーパーヒロインこと黒髪めだかとその幼馴染みの人吉善吉を中心に展開する学園漫画『めだかボックス』(西尾維新:原作、暁月あきら:作画/集英社)などでも、理屈&軽妙な会話&熱血バトルの妙を堪能することができる。

 そんな西尾維新作品のプロジェクトは、すでに『傷物語』のアニメ劇場公開と、全物語のアニメ化が決定している。今後もまだまだブームが続きそうな気配だ。

文=キビタキビオ