映画『プラチナデータ』で二宮和也が演じた“いけすかない男”

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更新日:2014/2/8

 人気ジャニーズグループ「嵐」のメンバーであり、クリント・イーストウッド監督作品に出演もするなど、俳優としての実力にも磨きをかけている二宮和也。『ダ・ヴィンチ』3月号では、3月公開の東野圭吾原作映画『プラチナデータ』にかけた、俳優としての想いを語っている。

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 ――『プラチナデータ』は、近い将来の日本が舞台のサスペンスミステリーだ。二宮和也が演じたのは、DNA捜査システムを構築し、神のごとく振る舞う天才科学者・神楽龍平。ニヤリと自信の笑みを浮かべる初登場シーンからこの人物、ちょっといけすかない!

 「いい人に見えないようにはしました(笑)。神楽は、自分が絶対に正しいと思っているし、自分が正義だと思っている。人間に裏切られたくないから、人間と付き合わない。機械は裏切らない……と思っていた彼が、自分で作ったシステムに追われていく、一種の不条理劇だと思ったんです」

 連続殺人事件の捜査をきっかけに、ストーリーは不条理な逃亡劇へと変貌する。2011年公開の『GANTZ』に続き、二宮和也のアクション俳優としての資質が爆発した。身に覚えのない犯罪で警察に追われる、「逃亡」のさまざまなバリエーションを、体当たりの演技で実現してみせたのだ。序盤のクールな表情を崩し、真実を求めて駆け回る主人公の姿に、観客は応援の気持ちを高めていく。

 「ああいう逃げていくシーンって、すんなり流して観られてしまう危険性がありますよね。そこを、ちゃんと飽きさせないで、ちゃんと展開を付けて楽しんで観られるものにするっていうのは、監督の強い意向だったと思います」

 本作は、熱い人間ドラマを内包した、本格ミステリーでもある。後半でどんでん返しのサプライズが連発するのだが、実はキャストが全員集合した最初の本読みまで、二宮の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだったそう。二宮は台本を、全部は読まない。自分の役が出ているシーンだけ、読むようにしている。

 「一発目を大事にしている人なんです。最初の印象を大事にしている。自分以外の役を、自分の頭で勝手に考えて読んじゃうのはもったいないなあって思うんですよ。他の登場人物像とか全体の話の流れとかは、みんなと“せーの!”で読んだ時に、そこで初めて気付ければいいと思っている」

 台本をあえて飛ばし読みすることで、初めてこの映画に触れる観客と、できるだけ同じように驚き、できるだけ同じように心を動かせるようにする。「本読みで感じたいろんな感情は、よく覚えておくようにしていますね」。さらに驚かされたのは、二宮発信のこんなアイデアの存在だ。

 「無意識に人に優劣を付けてしまっているヤな人っているでしょう? 自分が相手より上だと思うと、いやみったらしくなったりする。神楽は、そういうタイプだと思ったんですよ。だから浅間刑事(豊川悦司)は、右に立たせてないんです。右に出る者がいないから右に立たせない……とか言葉にしちゃうと、まあまあ恥ずかしいんですけど(笑)。観ている人には別に気付かれなくていい、でも無意識に刷り込まれればいいなって思いながら、スタッフのみんなと相談しつついろいろ細かいことをやってましたね。そういうことをひとつひとつ考えるのが、小説を実写で映像化するにあたっての、僕らの使命なんじゃないかなあと思ったんですよ」

取材・文=吉田大助
(『ダ・ヴィンチ』3月号「スタジオ・インタビュー」より)