朝日流VS読売流 どっちが文章うまくなる?

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更新日:2013/2/7

 ブログにツイッター、Facebookなど、自分の思いや意見を多くの人に発信する機会は増える一方。人に届く文章を書きたいけれど、書くのは苦手……そんな悩みを抱えている人も多いのでは。

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 で、こんなときの定番といえば、朝日新聞の名物朝刊一面コラムである「天声人語」。“人に伝えるための文章”として、この天声人語をお手本にする人は数多く、文章力アップのための『天声人語ノート』(朝日新聞)や『書き写し 天声人語 思い出アルバム』(朝日新聞社/朝日新聞出版)といったものも販売されている。

 しかし最近、この天声人語の独擅場に「ちょっと待った!」の声が。読売新聞の同じく朝刊一面コラム「編集手帳」の6代目執筆者がまとめた『「編集手帳」の文章術』(竹内政明/文藝春秋)が1月に発売され、いま、とても売れているのだ。……ここで、素朴な疑問がひとつ。果たして、朝日流と読売流では、どちらが文章を上達させることができるのだろうか? 今回は両者の本を基に、この疑問に迫りたいと思う。

 まずは、読売側の『「編集手帳」の文章術』から。文章術と銘打つだけあり、本書はすぐに実践に活かせる文章テクニックがズラリ。たとえば、文章にとって重要な構成の立て方について、落語にならって書き出しを「マクラ」、締めくくりを「サゲ」とし、さらにマクラとサゲに挟まれた本題部を「アンコ」と呼んで、その書き方を指南。マクラでは「本文と直接関係がなく、多くの人が興味をおぼえる雑学知識」を持ってきて、アンコでは簡潔に「本文の概要を紹介」、サゲでは余韻をキーワードに、「読者を本題の緊張から解き放つ文章」を意識するのがいいらしい。

 また、「私の“文章十戒”」という章では、「接続詞に頼るなかれ」「敬称を侮るなかれ」と、文章を書く上で気をつけたいことを紹介。なかでも、「感情を全開にするなかれ」という項目では、ツイッターなどのSNSでも陥りがちな、感情の爆発によって言葉が暴走することに注意を即している。といいつつ、著者自身も「学校のいじめや幼児虐待の話題になると正気を失う傾きがあります」「いじめを取り上げて、まずまず抑制の利いた『編集手帳』は数えるほどしかありません」と告白。それでも、目標は「淡麗辛口」。「淡く、麗しく、辛口で」というのが、コラム書きとして座右の四文字熟語なのだそうだ。

 この本のいいところは、著者が“上から目線”ではない点。失敗や反省が織り交ぜているせいか、妙な親近感がわくのもポイントだ。読むにつれて何か書いてみたくなる気が起きる、面白おかしい授業を受けているような1冊である。

 次に朝日側の『書き写し 天声人語 思い出アルバム』を見ていこう。こちらは読売側と打って変わって、スキルアップのための助言は一切ナシ。戦後から現在までの天声人語のなかからよりすぐった44編が掲載されており、それを書き写すためのスペースが用意されているのだ。また、記事中から漢字をピックアップし、その正しい筆順が解説されていたり、文章に登場する言葉の意味や人物の略歴が記された欄も。書き写すことで文章のリズムを身に付けるだけでなく、当時の世相やそのときの思い出を振り返ることができるというのが本書の大きなポイントだろう。文章の上達には、良い文章を“写経”するように書き写すのが近道だというが、まさしくその王道をいく1冊である。

 読売流に朝日流。アプローチの仕方はまったく違うが、文章力向上にはうってつけの2冊であることには間違いないはず。オススメは、『「編集手帳」の文章術』を読み、スキルを身に付けてモチベーションを上げ、『書き写し 天声人語思い出アルバム』でリズムを叩き込むという方法。読売と朝日の良さを自分のものにすれば、きっとあなたも名文家になれる……かもしれない?