大谷翔平選手に読んでほしい! 元祖!? 「二刀流」の人生哲学

スポーツ

公開日:2013/2/14

 プロ野球は春季キャンプの真っ最中。今年の話題はなんといっても日本ハムのルーキー・大谷翔平。メジャー挑戦から一転、日本球界でのプレーを選んだ大器は、投手と打者の「二刀流」にチャレンジすることで大きな注目を集めている。

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 この挑戦、「前代未聞」的に語られることもあるが、実はプロ野球における二刀流は彼が初めてではない。しかし、いずれも大成功とはいえず話題づくりの感は否めなかった。

 では、実際に二刀流である程度の結果を一軍で出した選手はいるのか? いるはいるのだが、それは投手分業制など現代野球の常識が当てはまらない、1970年以前に遡らなければならない。すると1人、純然たる二刀流とはいえないものの、かなりの実績を残した選手がいる。それは大洋やヤクルトで監督も務め、現在はフジテレビの野球解説者として活躍する関根潤三氏だ。関根氏は現役時代、日本で唯一、投手と野手の両方でファン投票にてオールスターに出場。投手としてはエースとして活躍し、通算65勝。打者としても通算1137 安打を記録した。安打は多くが30歳で打者に転向してからのものだが、投手時代から本職顔負けの打撃を披露。投げない時は代打、時には先発野手で出場することもあり、若き頃は先発投手として投げつつ、規定打席には満たないものの100打席以上立って打率3割台をマークした年もあった。

その関根氏、実は昨年秋に本を出している。タイトルは『いいかげんでちょうどいい』(ベースボールマガジン社)。中身は85歳になった今も「味のあるおじいちゃん解説者」として独特の人気を誇る関根氏の人生哲学をまとめた1冊だ。江戸っ子らしいきっぷの良さとタイトルが示すような肩の力が抜けた人生論は、悩んでいる時に読むと気が楽になり前向きになれそうである。「くよくよ悩んでいるくらいなら銀座でパーッと遊んで忘れた方がいい」などは、その最たる例だろう。

 もちろん、現役時代の二刀流にもついても触れている。が、「やっぱり野球は、投げるのも打つのも両方面白い。ずっとそう思っていた」(本文より)と、その理由を拍子抜けするほどあっけらかんと振り返っている。プロのキャンプで二刀流に戸惑う報道も多い大谷選手。彼のインタビューを聞いていると、何事にも「しっかりやりたい」といった真面目な性格がうかがえる言葉が多い。高いレベルでの挑戦に意気込む気持ちはわかるが、それがあだになって彼を苦しめることにもなりかねない。時代が違うとはいえ、二刀流が重荷になりそうな時は、関根氏のような「野球を楽しむ」「打つのも投げるのも楽しむ」という素直で気楽な心持ちで取り組んでみるといいかもしれない。

文=長谷川一秀