ハマカーン神田だけじゃない! 強烈すぎる姉に悩む弟たち

マンガ

公開日:2013/2/22

  昨年末、『THE MANZAI』で王者に輝き見事ブレイク、現在テレビ番組に引っ張りだこのハマカーン。神田伸一郎がうざい女子トークを展開、浜谷健司がキレまくるという、これまでとは違った漫才スタイルで挑んだことが勝因だったといえよう。この神田の姉がタレントの神田うのであることはご存じの通り。2月10日に放送された『アシタスイッチ』でも、伸一郎は「うのの弟」と呼ばれ続けてきた苦悩を語り、自由奔放な姉を持ったことの複雑な感情をあらわにしていた。

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 しかし、姉に苦労している人は、マンガ界にも存在する。『となりの関くん』(メディアファクトリー)で人気を集める森繁拓真の姉は、『ママはテンパリスト』(集英社)『海月姫』(講談社)『主に泣いてます』(講談社)などで知られ、『かくかくしかじか』(集英社)も好評な東村アキコ。4月からは京都精華大学マンガ学部の客員教授に就任予定の、泣く子も黙る大人気作家である。そんな姉からの「むちゃぶり」に森繁が耐え抜く作品が、グルメエッセイマンガ『いいなりゴハン』(集英社)だ。

 この作品、成り立ちから弟の悲哀が詰まっている。出版社から新連載の打診があり、嬉々として打ち合わせに向かうも、すでに担当編集者と東村のあいだで企画は決定済み。東村の「これから不況でもっと厳しくなるんやから やるならエッセイ物がいい!」という指示と、編集者の「お姉さんが関わってくれた方が心強いですし 人気的に」とぐうの音も出ない意見に、森繁はあえなく屈服。東村がオススメの店に食べに行ってレポートするという内容に決定してしまう。

 もちろん、これは苦悩の序章にすぎない。姉から届くオススメは、森繁が「別に好きじゃない」ホルモンの店だったのだ。しかし、さすがは「漫画界きっての食通」と呼ばれるだけあり、姉の推薦店で森繁はホルモンのおいしさに開眼。あっさり「姉は良い人です」と再び屈服する。……が、東村が指示する店は、連載2回目もホルモン、3回目も4回目もホルモン。しかも取材日には多忙なはずの東村も同行し、そのホルモンマスターぶりを見せつけるのだ。

 その後も、いよいよ連載5回目にして海鮮にありつくも、最後になって「やっぱホルモンにしとけば良かった」と東村がつぶやくなど、“肉食系姉”に“草食系弟”が食われっぱなしの展開。だが、そんな状態に逡巡しつつも、いいなりになってしまう森繁のダメ弟っぷりが本書のキモ。この見事なコントラストには、思わずうらやましくなるはずだ。

 だが、姉のインパクトが強すぎる場合、弟はどう立ち回ればいいのだろうか。その答えのひとつが、清野とおるのコミックエッセイ『東京都北区赤羽以外の話』(講談社)に登場する「江森姉弟」にある。この本では、清野が出会った“奇人”を紹介しているのだが、江森姉弟というのは、姉はブログが話題のマンガ家・まんしゅうきつこ、弟はイケメン写真家として有名な江森康之のこと。その変人ぶりはすさまじく、ある日、3人で遊んでいたとき、「ウオー! なんかビタミンC摂取してえ!」といきなり弟が叫び、その後ダッシュ。戻ってきたその手には袋詰めのみかんが握られていたらしく、“夜道ですれ違った若い女性や老婆に、唐突にミカンを差し出す”という謎の行動に。そんな弟を「フフフ、相変わらずのようね」と見守る姉……。さらに、スナックに移動するも、姉は突然「キャー」と断末魔の悲鳴をあげ、「ちょっくらナプキン買ってきますか」と言い残してその場を後にしたという。――姉弟で互いに個性をぶつけ合うその姿は、まさにファンタスティック。江森姉弟のようにインパクトを二乗にすれば、きっと怖いものはないだろう。

 『いいなりゴハン』で共感し、『東京都北区赤羽以外の話』で個性の磨き方を学ぶ……ハマカーン・神田のみならず、姉の強烈さに悩む人にはぜひオススメしたい2冊だ。