ニコ生で激論! 現代の絵師が生計を立てるには?

アニメ・マンガ

2013/2/27

 近年、ソーシャルゲームやライトノベルなど、「絵師」(イラストレーターのこと)と呼ばれる人たちの活躍の場が増えている。イラスト投稿サイトのpixivやニコニコ静画には毎日大量の作品が投稿され、そこでの活躍をきっかけにプロの道に進みたいという人も多いと聞くが、一方で、ネット掲示板やSNSなどでは、「絵師」の原稿料の安さが度々議論されており、“どうすれば食べていけるのか”ということが注目されているのだ。

 ニコニコ生放送の特別番組として今月19日に配信された『ニコニコ“クリエイター奨励”新発表~現代の絵師が生計を立てるには?~』では、2011年 12月からはじまった「クリエイター奨励プログラム」の利用状況の報告が行われ、現在までの総支払額が約3億円であること、1,000万円以上を受け取ったユーザーが3名いることなどが明らかにされたほか、同プログラムのニコニコ静画への全面対応を記念し、番組後半では、“絵師”が生計を立てるにはどうすればいいのかというテーマについてのトークセッションも行われた。

  • 現代の絵師が生計を立てるには?

    『ニコニコ“クリエイター奨励”新発表~現代の絵師が生計を立てるには?~』

 司会はメディアジャーナリストのまつもとあつし氏。ゲストにイラストレーターの西又葵氏、岸田メル氏、漫画家の佐藤秀峰氏といった現在第一線で活躍するクリエイター3人と、同人誌や同人ゲームなどの販売を行う「DLSite.com」の高原真志氏、ユーザーが作品を投稿して交流する「TINAMI」の篠田匡弘氏、そしてドワンゴ伴龍一郎氏といった出版事業Webコンテンツ事業にたずさわっている3人が呼ばれ、それぞれ自分たちの経験をもとに語ってくれた。

 「今、ネットで作品を発表してお金を儲けようと考えている人は少ないと思います。ほとんどの人は人気を得ることまでしか頭にない。なので、そこからどうやってお金を稼げるようになるかは、それぞれ工夫が必要になるでしょうね」

 自身のHPにアップしたイラストが評判となり、ライトノベルの表紙イラストやゲームのキャラクターデザインといった仕事へとつながった岸田氏は、番組がはじまるとこう切り出した。

左から篠田匡弘、高原真志、伴龍一郎の3氏

 同じく「投稿主や作品の人気はネットコミュニケーションのひとつの形態であって、実際の作品の評価とは違うところがある。そこを理解した上でクリエイターたちはどうやって生計を立てていくかを考えた方がいい」(篠田氏)、「例えSNSなどで人気のあるクリエイターでも、販売サイトでは辛辣な反応があったり、ほとんど売れなかったりといったことが多い」(高原氏)など、現状では、ネットでの人気イコール“食べていける”ということではないらしい。

 西又氏も、「学生時代にデビューしたのですが、マンガを描いていた頃は生活できるほどのお金はなく、親からの協力を受けながら活動を続けてました。イラストを描くようになってから徐々に仕事を依頼されるようになり、一人暮らしになってからは生活をするために必死に描いてましたね」と当時の苦労を語る。最初の頃の描き下ろしの原稿料はわずか2,000円だったというから、想像以上にハードな業界のようだ。

 では、今後クリエイターたちはネットをどう活用すべきか。
「まずは、お金のことは気にせずネットをうまく活用して人気を上げることを目標にした方がいい。お金のことはあとからついてくる」(岸田氏)、「ネットに投稿された作品は“ポートフォリオ”として機能しており、そこから仕事につながることも多い。イラスト投稿サイトなどは、出版関係者や編集者にとっても才能の発見の場になっている」(篠田氏)など、自身のプロモーションに有効活用するべきということが共通の意見として上がった。

左から佐藤秀峰、岸田メル、西又葵の3氏

 これに対し「もっとお金のことについて交渉してもいい」と佐藤氏。「僕はお金が大好きですからどんどん交渉します(笑)。実際にみんなが交渉しないから(ギャラが)上がらないという現実がある」と話しながらも、「出版社からの収入だけでは不安定。同人といった自分のこれからの仕事につながるような活動はどんどんやったほうがいい。たくさん数を撃てばどこかには当たるから」と、自身も芸能人や有名人の似顔絵などを無償で描いたエピソードを披露してくれた。

 趣味の延長、もしくは最初から仕事と意識してなど、プロの世界への入り口は人それぞれだが、そこで活躍する秘訣については、岸田氏、西又氏、佐藤氏の3人とも「自分をプロデュースする力」であると一致。世の中でどんなものに需要があるか感じ取り、人とは違う見せ方や方法で作品として昇華させるという能力は、“絵師”にかぎらず、あらゆるクリエイターに求められるということだろう。もちろんその中にネットで人気を獲得するということも含まれるのだ。

 最後にドワンゴの伴氏は、「ニコニコ動画では、ボカロP、歌い手といったクリエイター、アーティストが動画からファンを獲得してメジャーシーンへ出て行くという現象が起こっている。こうしたことがネットの様々な場所で起こってほしいし、僕らもそれらを支援する仕組みを考えていきたい」と “クリエイター奨励プログラム”の意図を語った。

 Googleが、日本のクリエイターの創作活動と世界進出を支援するスタジオ施設「YouTube Space Tokyo」を六本木ヒルズ内に開設し、さまざまな分野で活動するクリエイターに本格的な映像制作の場を提供していくことが発表されるなど、既存の仕組みの中にはなかった新たな仕組みが模索され始めている。果たして、どのような方法がクリエイター側、あるいはプラットフォームを作る側から生み出されていくのか、今後の動向に期待したい。