「いつやるか? 今でしょ!」わかっちゃいるけど…どうすれば行動力が身につく?

暮らし

公開日:2013/2/23

 東進ハイスクールのCMで人気講師の林修先生が放つ「いつやるか? 今でしょ!」というフレーズが人気だ。「今年の流行語大賞では?」とささやかれており、林先生自身もトヨタのCMや「金スマ」(TBS)に出演するなど、ブレイクの兆しを見せている。

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 なぜ今、この言葉が注目されているのか。見る者を惹きつける圧倒的な熱量や、クスッと笑ってしまう心地よい鬱陶しさなど、ネット上でも様々な要因が指摘されているが、個人的には「見る者すべての“痛いところ”をついている」という点にこのフレーズの魅力が宿っているように感じる。

 やろうと思っているけど動き出せない。「近々ぜひ!」なんて言っていた飲み会が社交辞令に終わる。こういったことは、誰の身にも起こりえるはずだ。「仕事がひと段落したら……」「春になったら……」なんて言い訳をしつつ、行動に移れない自分を嘆く始末。わかっちゃいるけど、なかなかできない……。だからこそ、「いつやるか? 今でしょ!」というフレーズが多くの人の胸を打つのではないだろうか。

 行動力をつける──。言葉にするのは簡単だが、実現するのは思いのほか難しいこの問題に、刺激とヒントを与えてくれる実践的な本がある。『7つの動詞で自分を動かす─言い訳しない人生の思考法』(石黒謙吾/実業之日本社)だ。著者はこれまで200冊近い書籍を作ってきたフリーランスの編集者。本書では、この驚異的な数の書籍を生み出してきた自身の行動力について、“動詞”という変わった切り口で分析・解説していく。

 書籍作りのプロセスは意外にシンプルだ。おもしろそうなことを思いついたら、とにかく出版社に企画書を投げ、反応をうかがう。そして、GOサインが出たら書く。簡単に言うと、ひたすらこれの繰り返し。ここで大切になってくるのが、行動力。素早く動き、断られたら次の候補に当たる。著者はこれまで1000回以上も断られてきたというが、めげず、躊躇せず、企画が実現するまで、とにかく行動あるのみ。この能動的なアクションを作り出しているのが、「動詞で考える」という思考法だという。

 ここで言う7つの動詞とは、「ぶつける」「分ける」「開ける」「転ぶ」「結ぶ」「離す」「笑う」というもの。例えば「ぶつける」であれば、「今度飲み行こうよ」ではなく、「○日に飲み行かない?」と具体的な日程をぶつけてみる。摩擦を恐れて行動にブレーキをかけないようにするため、日頃から家族や仕事仲間と意見をぶつけることに慣れておく。また「結ぶ」であれば、SNSで人脈やつながりを作るというのではなく、仕事や遊びを通じて誰かと現実的な縁を結ぶ。このように、動詞は目的語をともなうため、アクションが必ず具体的になる。これが動詞的な思考法のポイントだ。

 日頃から地道に準備をし、勘を養い、分析力を高め、トライアンドエラーを繰り返し、決断力を磨き続ける。行動力というのは、そういったトレーニングの中で身についていくものなのだ。

 つまり、「いつやるか? 今でしょ!」への道も一歩から、というわけか……。自分の中に「この本を読めば行動力がつくかも!」という受動的な気持ちがあったことに、まざまざと気づかされた。

文=清田隆之