毛皮のマリーズ、最後のアルバムはビートルズゆかりのスタジオで収録

芸能

更新日:2011/9/28

 先日、解散を発表したバンド、毛皮のマリーズのフロントマン・志磨遼平さんが愛読する一冊。それは早川義夫『ぼくは本屋のおやじさん』(晶文社)。

「早川さんはジャックスというバンドをやっていらした方で、23歳で引退して、本屋を開いて、隠居しちゃうんですよね。なんていうか、非常にシンパシーを感じまして。あるんですよ、僕にも老成への憧れが」と志磨さん。

 とはいえ、この本を読むと、「本が好きだし楽そうだから」と本屋を開いたはずが、早川さん、ちっとも楽そうじゃない。

 「“立ち読みは是か非か”とか一個一個真面目にぶつかるじゃないですか。生きるのが上手じゃないというか、順応して生活を営めないというか、胸を張って言うことでもないですけど、お気持ちはわかりますと」

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 では23歳の頃の志磨さんはどんなだったのかとたずねれば「クソでしたねえ」と振り返る。

 「高円寺のアパートに引きこもって、曲をつくっては捨て、つくっては捨て……自分でも未熟なのがわかるから発表したくはないわけです。早く歳をとりたいという思想はそういう時に楽なんですよ。若いうちになんとかしなきゃと焦らずに済む」

 その後、早川さんは23年ぶりに音楽活動を再開した。

 「この本の続編にあたる『たましいの場所』で、復帰後初めてテレビで歌った時のことを書いてるんですけど、緊張のあまり3回も4回もトチってしまう。あとで映像を見たら、おじいさんが震えながら恋の歌を歌っていて、恥ずかしかったけど、震えて何が悪い、これが自分の歌かもしれないと思ったと。それを読んで、なるほど、歌っていうのはそういうものかもしれんと。すごく勇気づけられたんです。だから僕は早川さんにはちょいちょいお世話になってるんですよ」

 3rdアルバムにして最後のアルバムとなった『THE END』(日本コロムビア)では、ビートルズゆかりのアビーロード・スタジオで数曲のレコーディングを敢行した。

 「マイクも、いまだにビートルズが使ったマイクなんですよ。うちは親がビートルズを好きで、僕もほとんどそれでできているので、サケが源流に戻ってきたかのようなスペクタクルな体験なわけです。いつもは100テイク試す僕がとてもそんな気になれず、早川さんじゃないですけど、スウッっと一生懸命歌ったら、一発OKでした」

(ダ・ヴィンチ10月号 あの人と本の話より)