マニアックでも売れる! “ビブリア古書堂効果”がすごい!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/25

 放送開始前から、主演の剛力彩芽をめぐって賛否両論の声があがったドラマ『ビブリア古書堂の事件手帖』。「黒髪ロング」「細身だが巨乳」「眼鏡」「ミステリアス」といった原作の栞子のイメージが、ショートカットで元気なイメージの剛力とはあまりにも違いすぎることから、キャスティングを疑問視する意見も多かった。さらに原作では栞子の「妹」が、ドラマでは「弟」に変更されていることにもとまどいの声が。


 そんな逆風のなかのスタートだったが、やはり『ビブリア古書堂の事件手帖』はすごかった。作中に登場した本が、次々と売れゆきをのばしているのだ。

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 これまで、初回の夏目漱石の『それから』から小山 清の『落穂拾ひ』、S・N・ヴィノグラードフ、A・F・クジミンの『論理学入門』に宮沢賢治の『春と修羅』、アンソニー・バージェスの『時計じかけのオレンジ』、太宰 治の『晩年』、梶山季之の『せどり男爵数奇譚』などが登場しているが、放送直後にネット書店で売り切れたり、翌日以降リアル書店での売れゆきが何倍にも増えたりしている。しかも、たとえば5話に登場した『時計じかけのオレンジ』は、キューブリックの映画で有名ではあるが、近年人気のない翻訳小説で、性的に乱れきった近未来を舞台にしたハードなSF。6話に登場した『せどり男爵数奇譚』は『ビブリア~』と同じ古書ミステリーの古典だが、何度も絶版を繰り返していて有名とは言い難い。そう、いずれもいわゆる“売れ線”とはほど遠い。メディアに取り上げられた本が売れることはあるが、こうした“マニアック”ともいえる作品までが売り上げをのばすというのは、異例中の異例といっていいだろう。これはまさに“ビブリア古書堂効果”!

 ただ、古書店を舞台にした作品なので『漱石全集』や『論理学入門』など、すでに絶版となった本も多い。しかし、なんと3月には2話に登場した『落穂拾ひ』がちくま文庫から復刊されることが決まったのだ。もしかしたら、これも“ビブリア古書堂効果”なのかも。

 原作では、他にも坂口三千代の『クラクラ日記』(筑摩書房)や童話でおなじみの『王様のみみはロバのみみ』。足塚不二雄名義で描かれた藤子不二雄のSFマンガで、最初で最後の描き下ろし単行本だった『UTOPIA 最後の世界大戦』。それに、風見 潤の『たんぽぽ娘』(集英社)や司馬遼太郎の『名言随筆サラリーマン』といった絶版本も扱われているので、今後ドラマでも登場してくるのではないだろうか。

 『ビブリア古書堂の事件手帖』に出てくる本は、決して有名なものではなく、過去にそれほど注目されなかった作品もたくさんある。それでも、ドラマや原作の小説で『ビブリア古書堂の事件手帖』に登場する本に興味をもった人たちからは、ネットやAmazonでも復刻を望む声が多数上がっている。『ビブリア古書堂の事件手帖』にかかれば、どんなマニアックな作品でも売れてしまうのだ。

 もしかしたらみなさんの声が届き、これから復刻される作品もあるかもしれない。出版各社は、この“ビブリア古書堂効果”が発揮されているうちに復刊の計画を立てておいたほうがいいかも?