2045年、コンピュータが全人類を超える!?

社会

2013/3/1

 1999年のノストラダムスの大予言、2000年のY2K問題、そして記憶に新しい2012年のマヤ歴の予言――。映画やコミックなど物語の世界では、こうした暗示めいた年は格好の題材となり、たとえ信じていなくとも気になってしまうのはたしか。2012年も過ぎ、予言めいた年も当分ないだろう……と思いきや、次は2045年が問題とされているらしい。それにしてもずいぶん先の話だ。いったい何が起こるというのだろう?

 『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』(松田卓也/廣済堂出版)によれば、未来のある時点でコンピュータ技術が爆発的に発展し、それ以降の進歩を予測できなくなるとしている。このターニングポイントは「技術的特異点」と呼ばれ、アメリカのコンピュータ研究者レイ・カーツワイルは、2045年にそこに達すると主張。この議論が「2045年問題」と呼ばれているのだ。

 本書の著者は、宇宙物理学者・理学博士として80年代からスーパーコンピュータに接してきた。当時のスパコンは部屋いっぱいの大きさだったが、その能力はスマートフォン以下。その後、現在のスーパーコンピュータ「京」になると、80年代のものに比べ1000万倍のスピードに達した。こうした技術進歩は近年さらに加速している。たとえば、2012年3月に第三世代のiPadが発売されたが、同年10月には早くも第四世代のiPadが発売されるなど、もはや使う側の人間が戸惑ってしまう速さだ。

 コンピュータ・テクノロジーの進歩は「指数関数的」だとされている。一般的な進歩の予測は、来年に2倍となるとしたら、2年後は3倍、3年後は4倍といった直線的なもの。しかし、コンピュータ・テクノロジーに至っては、来年が2倍なら、2年後は4倍、3年後は8倍という上昇曲線を描き、10年後には1000倍、20年後には100万倍と加速度的に進歩していくものらしい。そして、このまま行くと2045年には「コンピュータが全人類の知能を超えてしまう」というのだ。

 これは単に計算速度が速いといっただけではなく、人工知能の発達によりコンピュータが意識を持つようになったり、自身でプログラムを改良するまでになる可能性があるそうだ。この究極コンピュータが人類最後の発明となり、それ以後の発明はすべてコンピュータが行う時代が来る!?

 本書はコンピュータの最先端技術、欧米の人工知能開発の最前線を提示した上で、2045年にコンピュータが全人類の知能を超えたとき、どんな世界が訪れるかを考察したもの。映画『2001年宇宙の旅』に登場する意識を持った人工知能「HAL」のようなコンピュータが現れ、彼らが人間に変わって働くことで、世界的な大失業時代が到来するかもしれないと著者は指摘する。

 膨大なデータベースを持ち、地球上の誰よりも賢く、しかも自ら進化する。そんな究極のコンピュータが完成したら人類はそれを扱いきれるのだろうか? それこそ映画『マトリックス』のように現実としか思えない“シミュレーション現実”をコンピュータが創り出し、人間を支配・管理している世界も考えられるし、人間がコンピュータの叡智を使いこなして完成された平和社会を築いているかもしれない。結局のところ、「それ以降の進歩が予測できない」というのが「2045年問題」なのだ。

 まるでSFやオカルトサイエンスの話みたいで、ぴんとこない人も多いだろう。なにしろ30年以上先の話だ。しかし、シリコンバレーではアメリカ政府、NASA、グーグルなどのバックアップで「特異点大学」という研究機関が2008年に設立され、国家的組織を交えて真剣に議論されているという。人間より優れたコンピュータが登場したら、人類の未来に多大な影響を与えるのは明らか。けっして荒唐無稽な議論ではないのだ。

 スマートフォンをはじめ、自動車や家電製品にもコンピュータが搭載され、その加速度的な技術進歩を実感する今、1999年や2012年のオカルトめいた予言よりは、よほど信憑性を感じてしまう。

文=大寺 明