吉田戦車&伊藤理佐 人気マンガ家夫婦の子育てマンガが話題

マンガ・アニメ

2013/3/8

 エッセイマンガを中心とした実録系コミックは今やマンガの一大ジャンル。取り上げる題材は多岐にわたっているが、「子育て」もそのうちのひとつ。これまでも、東村アキコの『ママはテンパリスト』(集英社)やコンドウアキの『トリペと』シリーズ(主婦と生活社)、高野優の一連の子育てシリーズなど人気作品も多い。

 そのなかにあって、前代未聞の作品、といっても過言ではないのが『まんが親』(吉田戦車/小学館)と『おかあさんの扉』(伊藤理佐/オレンジページ)。『伝染るんです。』(吉田戦車/小学館)『おんなの窓』(伊藤理佐/文藝春秋)など人気作も多く、マンガ家として確固たる地位を築いているこの2人、実は夫婦であり2010年に女児が誕生しているのだ。そして、子育ての日々をそれぞれがマンガ化しているのが先の2作品なのである。通常ならマンガ家である夫もしくは妻のどちらかが描くのが基本。このケースは稀少……というか、おそらく初だろう。

 その内容はというと、子育ての過程で見た娘の行動や言動、周囲の人の反応などをギャグタッチで描いているという基本ラインは共通している。子育てエッセイの王道といえば王道なのだが、脅威的なのはネタのカブりがそれほどないという点。子育てがいかにそれまでの「大人の生活」を大きく変えるネタの宝庫かということを思い知らされる。子育てに苦労はつきものとはいえ、これだけ生活に刺激を与えてくれるなら、子どもを持つのもいいかも、といった気分にもなれる。

 興味深いのは、夫側の『まんが親』の方が、妻の妊娠・出産や子育てと向き合うことで生じる戸惑いやためらいがやや多めな点。自ら出産できない男は、子どもが生まれてもすぐには父親であるという自覚がない場合が多く、子育ての過程で次第に固まっていくといったことがよく言われるが、そんなことも関係しているのだろうか?

 ともあれ、実力十分のマンガ家がひとつの題材にそれぞれ挑む、という意味では非常に貴重な両作品。今後の展開に注目していきたい。

文=長谷川一秀