あの歴史的ヒーローを“再発見”! オススメ歴史ファンタジーコミック4選

マンガ・アニメ

2013/3/10

 『テルマエ・ロマエ』『仁―JIN―』など、近年、大ヒット作品が続々と生まれている歴史ファンタジーコミック。なかでも強い人気を集めるのは、読者の前提知識を逆手にとった、作者オリジナルの設定が際立つ作品だ。史実の意外な新解釈や、伝説的ヒーローの人間性の再発見……。マンガならではの創造的世界が、読者の知性に響くのだ。

 『ダ・ヴィンチ』4月号ではそんな、リアリティとオリジナリティの波状攻撃を仕掛けてくる、歴史ファンタジーコミックを特集。なかでも、誰もがよく知るあのヒーローたちを再発見するおすすめコミックとして、下記4冊をあげている。

■『風光る』(1~33巻)渡辺多恵子 小学館フラワーC
■『Y十M~柳生忍法帖~』(全11巻)山田風太郎/原作 せがわまさき/マンガ 講談社ヤンマガKC 
■『光圀伝』(1巻)冲方 丁/原作 三宅乱丈/マンガ 角川書店
■『ヒストリエ HISTORIE』(1~7巻) 岩明 均 講談社アフタヌーンKC

 『風光る』は、町医者の娘・セイが性別を偽り新選組に入隊、沖田総司の一番弟子として、武士としての成長を遂げながらも、沖田総司と惹かれあうという、幕末史に一石を投じたコミックだ。『Y十M』は、柳生新陰流を伝え、徳川将軍家剣術師範を努める柳生家の長男で、当代一の剣豪でありながらはみ出し者の柳生十兵衛が主人公。『光圀伝』はご存じ水戸光圀公が、なぜ自らの手で腹臣を殺したのか、その人生を振り返り事件の真相を語るというもの。そして『ヒストリエ』は、アレクサンドロス大王の書記官エウメネスの波乱に満ちた生涯の物語だ。

 この4作品は、もちろんその世界観も素晴らしいのだが、ここでは、主人公の魅力を描き出す際立った手腕に着目してご紹介したい。

 富永セイを例外として、『光圀伝』『風光る』『Y十M~柳生忍法帖~』の主人公は、実在する超有名な歴史上のヒーローたちだ。好々爺の黄門様、クールな天才剣士、豪傑な剣豪というように、彼らには定着したイメージがあるが、この3作品はその固定観念に真っ向から挑戦している。

 光圀は炎のような激しさと父に執着する不安感を身に抱え、沖田総司はかなり天然でセイとの純愛がとてもかわいい。柳生十兵衛は、意外な優しさでホロリとさせる。

 他方、『ヒストリエ』はエウメネスという人物に焦点を当てている。歴史上のすごい存在なのに、あまり知られていない。ずば抜けた頭の良さ、道具も将棋のようなゲームも即座に作ってしまう器用さ、そして飄々としたちょっと風変わりな性格。かのアレクサンドロス大王の書記官って、こんな人だったんだ! 新鮮な驚きと興味を私たちにくれる。

 彼らは皆、完全無欠な正義の味方とはほど遠い。弱い心も少しダメなところも持っている。清濁併せのむ一人の人間として、丁寧に描かれているのだ。人間味溢れるヒーローだから、彼らは私たちを惹きつける。ヒーローのかっこよさの再発見は、ここにあると思う。

構成・文=松井美緒
(『ダ・ヴィンチ』4月号「コミックダ・ヴィンチ」より)