生み出したのは国やマスコミ!? 暴力団でもカタギでもない「半グレ」の実態

社会

2013/3/10

 昨年9月に起きた六本木クラブ襲撃事件で逮捕された暴走族「関東連合」の元メンバーたち。彼らは暴力団でもなく、カタギでもない半分グレーゾーンという意味で「半グレ」と呼ばれている。大阪・ミナミでもアマチュア格闘技団体グループの一部が半グレ化して傷害事件を繰り返すなど物騒な話題が多い。そして今月7日、警察庁は「半グレ」を「準暴力団」と規定し、実態解明に乗りだし、取り締まりを強化すると発表した。

 しかし、「半グレ」という言葉ばかりが先行し、実際のところよくわからないというのが正直なところ。そこでオススメしたいのが『笑う裏社会』(島田文昭/フォレスト出版)だ。著者は人気コミック『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平/小学館)のブレーンのひとりであり、フリーライターとして10年以上に渡って裏社会を取材してきた。そこで見聞きしたヤクザや闇金、外国人マフィアといったアウトローたちが活写され、実際に彼らと接してきた著者ならではの親しみが伝わってくる。

 「彼らとぼくらは違う社会を生きているわけじゃない。すべては地続きなのだ。同じ時代、同じ社会で、ただ違う生き方をしているだけなのだ」と著者は述べる。実は社会に裏も表もない。そうした考えがタイトルの「笑う(疑うというニュアンス)」に表れているのだ。

 冒頭で語られるのが世間を騒がせている「半グレ」だ。関東連合の元メンバーの話では、彼らは18歳で暴走族を卒業する際、それぞれが別のヤクザの組に入り、トップとなることで将来、関東連合で日本を制覇しようと話し合っていたという。しかし、暴対法や暴力団排除条例が施行されたことで、彼らは卒業後の進路を変更した。だから、「半グレ」を組織と呼べるなら、それを生み出したのは国であり、暴対法の法案成立に反対しなかったマスコミなのだと著者は指摘する。ユーモラスに裏社会を語りながら、踏み込んだことも書かれていて読みごたえのある1冊だ。

 関東連合の構成組織「千歳台ブラックエンペラー」の元総長だった石元太一が『不良録 関東連合元リーダーの告白』(双葉社)という本を書き下ろしている。2010年の市川海老蔵暴行事件のきっかけとなった人物として話題となり、六本木クラブ襲撃事件に関与した容疑の逮捕状が出たことで、彼の姿を週刊誌やニュースで目にした人も多いだろう。

 本書には関東連合時代のトーヨーボール事件(暴走族同士の抗争により1名が死亡)や2010年の海老蔵事件の真相が語られているのだが、後悔の念が記されていて、世間で喧伝される凶悪人物というイメージとはやや印象が異なる。

 「関東連合」については、すでに解散しており、ヤクザのようにピラミッド型で組織立っているわけではないという。元メンバーは各業界で活躍し、困ったことがあったら業種の壁を超えて助け合う「組織ではなく仲間である」としている。実体があるようなないような、たしかにグレーゾーンかもしれない。

 「関東連合」をモチーフとしたと思われる小説も登場している。草下シンヤの『半グレ』(講談社)は、豊富なアンダーグラウンドの取材経験を持つ著者だけあって、物語は実にリアルで抜群におもしろい。なかなか就職できずにいた主人公は、どうにかイベント会社の就職に決まるが、その会社は暴走族「環状連合」の元リーダー乙矢がオーナーのブラック企業。当惑する主人公だったが、次第に乙矢のカリスマ性に惹かれはじめ、大金を得るようになったこともあり、感覚が麻痺してゆく。ついにはロンダリングや振り込み詐欺などの犯罪に関与することになるのだ。裏社会の手口や人間関係が臨場感たっぷりに描かれ、あたかも実話に基づいた話なのだと思い込みそうになる。本当のところはどうなのだろう? あくまでフィクションなので、こちらもグレーゾーンだ。

文=大寺 明