「ビブリア」「図書館戦争」…いま、本にまつわる場所が舞台の小説が人気!

文芸・カルチャー

2013/3/15

 現在放送中の月9ドラマ原作『ビブリア古書堂の事件手帖』、春に映画公開の決まっている『図書館戦争』などをはじめとして、いま、書店や図書館、出版社など本にまつわる場所が舞台の小説が人気を博している。なぜ、人は「本」のなかにも「本」を求めるのか? 『ダ・ヴィンチ』4月号ではその理由を追跡し、「本がある場所」が紡ぐ物語文庫を特集。おすすめ文庫を一挙掲載している。

 ――北鎌倉の古書店店主を務める黒髪の美人と彼女に惹かれるアルバイト青年が事件を解決――『ビブリア古書堂の事件手帖』の大ヒットについては改めて説明する必要はないだろう。「本の中で描かれる、本あるいは本のある空間」というメタ構造が数え切れないほど多くの読者を虜にしている現象が起きている。

 もっとも、こうしたジャンルは何も『ビブリア古書堂』に始まったものではない。とりわけミステリーの分野では「ビブリオ・ミステリー」(ビブリオとは《本》の意。ラテン語に由来する接頭語)と呼ばれるサブジャンルが古くから存在していた。もちろん、こうしたジャンルはミステリーに限ったものではなく、本自体をテーマにしたり、本のある場所を舞台としたものは古今東西数え切れないほど発表されてきたのである。

 なぜ、読者は本にまつわる物語に惹かれるのか。また、作家はそれを書くのだろうか。

 ひとつには、そもそも本好きが高じて作家になった人が書き、同じく本好きがそれを読むという当たり前といえば当たり前の構造が指摘できるのではないか。登場人物たちが本に魅せられ、書店や図書館といった空間で活躍したり、成長していく様子は本好きの共通認識として理解できる。言葉を換えれば、そこでどんな凄惨な事件が起きようと、あるいは本を通じた男女の出会いがあろうと、より以上に「共感」できるのだ。

 もうひとつの理由は、本とはすなわち物語であり、それがある場所こそが世界への入り口だ、という部分。作中に架空の物語や世にも珍しい稀覯本が出てくれば読者はそれを心から読みたいと感じ、実在する名作が登場すれば、実際に手にとってみる。読書とはある種の連鎖反応を生む。書店を訪れたときの高揚感、古書店で感じるある種の緊迫、図書館の静謐な空気などは、本の虫を自任する人たちなら例外なく理解できるに違いない。

 また、最近は広く世間に発言する力を持った書店員さんが急増しており、彼らの薦める本が注目されるケースも増えている。書店員さんたちはほとんど例外なく書店を舞台としたストーリーが好きなのだ。当然、薦め方にも力が入る。これもまた連鎖。そして、書店や図書館に特有の心地よく閉ざされた雰囲気も魅力のひとつといえるだろう。

 読書する中で、本を読むことの歓びや興奮を二重に味わうというメタ構造は読者を魅了する。積極的に新たな世界に触れたいと思うなら、本や本のある場所を描いた物語を探してみるのも悪くない。――文=田中 裕

 同誌では、「本がある場所」を舞台にした物語として、『古本屋探偵の事件簿』(紀田順一郎)、『淋しい狩人』(宮部みゆき)、『図書館の神様』(瀬尾まいこ)、『吉野北高校図書委員会』(山本 渚)、『図書館警察 Four Past Midnight Ⅱ』(スティーヴン・キング/著、白石 朗/訳)、『戦う司書と恋する爆弾 BOOK1』(山形石雄/著、前嶋重機/イラスト)といった数々の作品を紹介。ライトノベル、ミステリー、青春小説などとそのジャンルも幅広い。多岐にわたる文庫の中から、とっておきの1冊が見つかるかもしれない。

(『ダ・ヴィンチ』4月号「文庫ダ・ヴィンチ」より)