コミュ力ゼロ、女子力ゼロからの“エロ版まんが道”

マンガ

公開日:2013/3/17

 マンガ家マンガと言えば、藤子不二雄Aの『まんが道』(小学館)をはじめ、『バクマン。』(小畑 健:著、大場つぐみ:原著/集英社)や『アオイホノオ』(島本和彦/小学館)、『あしめし』(葛西りいち/小学館)に『僕の小規模な生活』(福満しげゆき/講談社)など、これまでもたくさんの作品が登場してきた。

 そして、2月27日にはエロマンガ家を目指すコンビの新たなマンガ家マンガ『えろまん。(仮)』(八神 健/竹書房)が発売された。主人公は技術もあるし仕事は速いけど、読者が濡れるようなおもしろい話が描けない因八健人。そして、ヒロインはコミュ障で社会性、女子力ともにゼロなのに、エロ妄想のレベルは最強という果神未亜。未亜のエロマンガの才能を見抜いた健人が、「私…持ち込みもダメだったし」と落ち込む彼女に「アンタにはエロ漫画の才能がある!!」「俺たち二人組んで漫画描いてみねーか?」と声をかけ、コンビを組んでエロマンガ家を目指すことに。しかし、ただでさえコミュ障の未亜が合作というより社会性とコミュ力が求められる共同作業を、どうやって乗り越えていくのか?

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 まず、おもしろい話がかけない健人は未亜の武器となる妄想力と探究心に助けられる。もともと少年マンガ家志望だった彼女は、露出度も高くないのにエロい作品を生み出せる天才だった。健人に「この女とんでもないド変態だぜ」なんて言われて「…こ光栄…」と答えちゃうほど、自他共に認めるド変態だったのだ。マンガの参考のために健人の裸を見せてもらっているときも、頭の中では犯される想像をしちゃうし、売れっ子マンガ家・天音キネコと健人が2人で仲良さそうにしているところを見ると、2人がHしているところを妄想して描いたり、夢にまで見るほど。彼女の思考は、すべてエロい方向へ行ってしまうのだ。

 それに、彼女の探究心も底知れない。勃起した健人のものをデッサンしたいと言いだしたり、取材と称してアダルトグッズのお店に向かったときもひとつひとつ手にとって興味津々で眺める。おまけに、ラブホテルにまで行ってしまうのだ。こんなふうに、どこまでも純粋でマンガに対してまっすぐな彼女だからこそ、おもしろい作品が描けるのだろう。

 一方、健人の武器は知識と技術。それに、未亜のコミュ障をカバーできるだけの社交性の高さだ。「あらゆるタイプのエロ漫画を読み込んだ」という彼は、未亜の原稿を見てその場ですぐにアレンジし、より読みやすくエロいコマ割りや構図に変えられるほどの知識がある。おまけに、車に轢かれてしまった未亜の原稿もその場で修正してくれるし、初めて会ったキネコのアシスタントだって難なくこなすほど器用。

 でも、やはりなんといっても一番なのは、言葉が足りない未亜の思いを汲み取り、彼女のために言葉を尽くしてくれるところだろう。特に初対面の人相手では目も見れず、俯いてばかりだった未亜。打ち合わせにも行かないし、担当からのコメントもクッションを被って聞こうとしない。部屋もゴミ屋敷状態で、髪もいつも寝癖だらけ。マンガを描くこと以外には、全く興味を示さなかったのだ。でも、健人が代わりになって打ち合わせや話し合いをこなし、できるだけ彼女と一緒に取材やいろんな場所に出かけるようにしたことで、彼の陰に隠れながらではあっても、徐々に心を開き、自分の思いを口にしてくれるようになる。

 そして、健人も未亜の一番近くで、5本も連載を抱えるキネコより「かがみさんの方がだんぜんエロい!」「かがみさんにはとことんエロを追求してもらいたい!」と言って、自信をつけさせてくれるのだ。また、未亜が自分を追い込んでひとりでがんばるため、家出同然で出ていった実家に帰ったときも、両親にいきなり「勘当してください!!!!」と言い出した彼女の決意を汲み取り、健人がその思いを代弁してくれる。そして、「いかなる時でも俺は全力でかがみさんを支えて二人でやってくつもりです」と宣言してくれるのだ。

 こんなふうに、足りない部分を2人で補いながら成長していく2人なら、エロマンガ界の頂点に立つ日もそう遠くないのかも?