もしもヤンキーがデブになったら……

マンガ

公開日:2013/3/21

ヤンキーのリーダーといえば、子分から恐れられ憧れられる漢の中の漢。そんなヤンキーが、もしもデブになってしまったら……?

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 3月6日に発売された『SUPERSTAR』(阿部秀司/講談社)の主人公は、秋志野市立北中学校第32代総番及び近隣3校を統括するほどの実力の持ち主なのに、どういうわけかたった3カ月の間にヤンキーをやめ、みるみる激太りしてしまった山田太。かつてヤンキーとして力を誇っていた男が、単なるデブになってしまったらどんな変化が起こるのだろう?

 まず、かつては周囲の人間から恐れられ、チームのトップとして「千葉統一に命懸けるぜ!」なんて言っていた山田はどこへやら。その威厳はすっかり消え失せてしまうようだ。今では小学生にすらなめられてしまい、ゲームを奪われたあげく顔を足蹴にされ、「ウルセェ」と言われてしまうほど。しかも、急に動いたせいで腰や膝まで痛めてしまい「誰か助けてー」なんて情けなくも助けを呼ぶ始末。さらに、ヤンキー時代には軽くのしていた相手にまで「おデブちゃん」や「ラード」なんて馬鹿にされてしまう。おまけに、太りすぎてしまったせいで肝心なときにはよく足を捻って転ぶし、首から足首にかけて全身あちこちつる。腰を痛めて動けなくなったり、お腹がつかえて起き上がれないなんてことも。もはや、ヤンキーだった頃の面影など微塵もないのだ。

 そのせいか、かつては何十人もいた彼の子分だって今はもうほとんどいない。残っているのは総番時代にNo.2として活躍した花小丸功と、ごくごく平凡な中学生の柏木直治だけ。ほかに彼を慕ってくれるのは、46歳にもなって昼間っから仕事もせずに酒を飲んでいるオッサンこと佐藤豪と、ほとんどしゃべらないクールビューティーな女子高生・近田里伽子。通称リカだけなのだ。

 これまで千葉統一目指して闘争してきた時間も、今では仲間と家でゲームをする時間に変わったし、常に何かを食べていなければ気が済まないようで、どこに行くにもチョコバーやバナナを持ち歩く。ときには、食べ物のにおいに釣られていつの間にか居なくなっていたり、コンビニで買い食いしていたりする。

 ところが、こんなただのデブに成り果ててしまった山田、何を思ったのか突然「オレは世界を救う!! 史上最高のスーパースターになるのだ!!」と言い出すのだ。そして「頼まれた依頼は絶対に断ってはならない!!」というたったひとつの掟に従い、依頼さえあれば「命を懸けてでもやりとげる」究極のボランティアチーム“ふとしーず。”を作る。小学生にさえ敵わない山田に活躍できることなんてあるのかと思いきや、意外にも電車で痴漢された女子高生のために見事に犯人を捕まえてしまう。

 その証拠になったのは、小腹の空いた山田が食べようとしてその女の子のスカートにこぼしてしまった粉チーズ。さらに、言い逃れできなくなって逃げ出した痴漢めがけて食べ終わったバナナの皮を投げ、転ばせて捕まえるといった方法ができたのもデブならでは。意外と、太っているということが人助けの役に立つこともあるのかも?

 それに、たとえ太ってもヤンキー時代の腕っ節の強さや仲間思いの熱いハートはまだまだ健在のよう。いくら自分がボロボロでも、仲間がやられていたら助けに来るし、一発で人を殴り飛ばせる強さや素手で顔面を骨折させたりビール瓶を砕くほどの握力もある。これほどまでに熱いハートをもったデブこと山田太とふとしーず。なら、もしかして本当に世界を救えるのかもしれない。