もしも自由自在にフラグを立てる装置があったら……

マンガ

公開日:2013/3/22

 異性との関係を恋愛に発展させるには、そのきっかけとなるフラグをいかに見つけ出し、うまく回収するか。それが何よりも大切なのだが、現実では「あー、あれがフラグだったか…」なんて後からでも気づければいい方。実際は、まったく気づかずにスルーしていることの方が多いのだ。でも、フラグを探そうとするから難しいのであって、そのフラグを自分で思いのままに立てられたらどうだろう?

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 そんなフラグの立て方を学べちゃう作品が、3月2日に発売された『フラッガーの方程式』(浅倉秋成、中村 ゆうひ/講談社)だ。ここでは、電波によって人々の行動をコントロールし、何気ない日常を深夜アニメのようなドラマチックな世界へと変えてくれる夢の装置“フラッガーシステム”が登場する。パソコンからこのシステムに「主人公とする人物」と「システムを稼働する時間(物語の長さ)」、「希望するラストの展開」をインプットすれば、準備は完了。あとは、世界のいくつかの地点に設置された電波塔から主人公の「会話」や「行動」をフラグとして認識し、それに従って人々の行動をコントロールしてくれるのだ。

 そして、そんな“フラッガーシステム”のデバッグに選ばれた主人公の高校生・東條涼一の日常は劇的に変化していく。

 そもそも、この“フラッガーシステム”のポイントはいかにフラグを立てるかにある。深夜アニメを見慣れた人なら、どこに行ってどんなセリフを言えばだいたいどんなことが起こるかわかっているだろう。「あいつ、今頃何してんのかなぁ……」なんて思わせ振りなセリフをつぶやけは、どこからか同級生や幼なじみがやってきて恋愛モードに発展していくのが当たり前。しかし、そうじゃない涼一にとってはさりげなくフラグを立てるのも意外と難しい。

 そこで活躍するのが、独り言だ。本来、アニメやゲームではナレーションとして書かれる心の声だが、“フラッガーシステム”では心の声を認識することができない。だからこそ、独り言を使うのだ。たとえば、涼一のように片思い中のクラスメイト・佐藤佳子と近づきたいなら、「稀に、通学途中で遭遇することがあるんだけど、そんな日は最高にハッピーで思わずスキップをしちゃうんだ」とつぶやいてみる。そうすると、本当なら家の方向が違うので絶対に遭遇することのない彼女が、偶然家の前を通りかかって一緒に登校することに。さらに、テスト前の勉強会を佳子の家で一緒にやらないかと誘われるのだ。そんなことありえないと思うかもしれないが、ただ思っているだけでは何も始まらない。実際、たとえ直接本人に話しかけられなくても、口に出して言ってみるだけで意外とその通りになることは多いのだ。

 そして、もうひとつはいかにフラグの立ちやすい場所へ誘うか。毎日一緒に通学したとしても、それだけでは次に発展していかない。次のステップに進むためには、何か他のイベントに出かけて新たなフラグを立てる必要がある。そこでいいのが、プールや海水浴に誘うことと、クリスマスを一緒に過ごすこと。プールや海水浴では、そこに行きさえすれば必ず「女性の水着がはだけてしまう」「女性がナンパされてしまう」「誰かが溺れ、人工呼吸をすることになる」といった何かしらのハプニングが起こる。クリスマスなんて、笑顔で名前を呼んで、「メリークリスマス」と言うだけですべてOK。こんなふうに、フラグを立てるためのセリフが思いつかないならフラグの立ちやすい場所へ行けばいいのだ。

 さらに、口ごもったり顔が赤くなるといった「好意のしるし」を人工的に生み出して自分を意識させることで、フラグを立てる方法もある。こちらは、気になる相手と会話しながら「君が頑張っていることは、僕が一番よく知ってるよ」なんてくさいセリフをかまし、さらに止めのひとことで「顔赤いけど、大丈夫?」と聞く。これで、もう相手とのフラグはバッチリ! 少し恥ずかしいかもしれないが、勇気をだして言ってみれば相手の方から意識してくれるかも。

 しかし、いくらフラグが立て放題だと言っても、自分の目指すべきルートに乗るためにはきちんと他のフラグを折り、好きな人とのフラグが立つように行動しなければならな い。そうしないと、学校の廊下を走っただけで「生徒会長」という腕章をつけた生徒に捕まって恋人のフリをするハメになったり、廊下で倒れていたら「魔術研究会」なんて怪しげな部活に引っ張り込まれてしまう。だから、“フラッガーシステム”を使ったとしても待っているだけや流されてばかりではダメなのだ。大切なのは、「絶対にこのルートに向かう」という強い意志を持って行動すること。それができれば、現実でも自ずと上手くフラグを立てられるようになるはず。

 そして、気になる涼一の物語の結末は、ぜひ本を読んで確かめてみて欲しい。