奇跡の神コラボ!? 新たな士郎正宗ワールドが描かれる!!

マンガ

更新日:2013/3/25

 『攻殻機動隊』(講談社)や『アップルシード』(青心社)で国内外に高い知名度を誇る士郎正宗と『エクセル・サーガ』『Holy Brownie』(ともに少年画報社)などの作品で知られる六道神士。どちらもマンガ好きにはたまらない作家だが、このふたりがタッグを組んでいたことをご存知だろうか。

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 そんな、藤子不二雄にも負けない最強コンビが放つ巨弾連載が、3月にとうとう単行本化となった。それが『紅殻のパンドラ』(角川書店)だ。そもそも、この作品、士郎正宗のあとがきによれば「この企画は元々2008年7月、アニメ制作会社の発注に準じて作られ、諸般の事情により進行が止まりそのまま眠っていたもの」らしく、時を経て復活をとげたものなのである。

 時は近未来。高度情報ネットワークが発達する一方で、世界各地で頻発する災害のため政治経済が混沌とした時代。主人公である機械の身体の少女、七転福音は、親類を頼りに人造リゾート島「セナンクル・アイランド」へ向かう。その途中、サイエンティスト然な雰囲気を醸し出す女性ウザル・デリラと、猫耳の生えた福音と同じ機械の身体を持つ少女クラリオンと出会う。福音の目指す途方もない夢「世界平和を買う」などの話を交え親交を深める彼女たち。そうこうしているうちに「セナンクル・アイランド」へと到着するのだが、島に到着した途端、地面から閃光が放たれ、ビルが倒壊する。その先にはクラリオンがいたはずと、彼女を助けるために、現場へ向かう福音。しかしその先では、重武装のテロリストや大量破壊兵器が待ち構えていた。

 作画は担当していないものの、士郎正宗らしさは全開で「全身義体」「パンドーラ・デバイス」「エルピス・シリーズ」など、各所にちりばめられたサイバーな単語の数々は、ファン感涙のもの。『攻殻機動隊』や『アップルシード』などで恒例だった、作中の単語に対するコマ外の細かな説明が無いのが口惜しいものの、それを補って余りある「らしさ」がギュッと詰まっている。

 美麗な作画やコマ割、キャラクター同士のテンポの良い掛け合い、シリアスな展開の狭間に挿入されるギャグ要素などは、六道神士ならではのものとなっている。なかでも、福音とクラリオンのカラミは、その愛らしい絵とあわさって、もうなんというか、百合好きにはたまらない代物となっている。

 まさに両者の才能のいいとこ取りで、神コラボといっても過言ではないほどだ。

 また、注目しておきたいのが、随所に匂わせる『攻殻機動隊』とのリンク部分。この作品では『攻殻機動隊』にも登場する「全身義体」という技術が、まだ普及されていないという設定。これだけでも、もしかすれば『攻殻機動隊』の世界の過去の話ではないかとワクワクさせてくれる。

 話はまだまだ序盤なので、今からでも十分についていける。六道神士が描き出す、新たな士郎正宗ワールドを堪能するために、今すぐ本屋に走ろう。