一時の流行に左右されない“本当の美しさ”の身につけ方

暮らし

2013/3/30

 美しいものにはできるだけふれるようにしましょう。
美しいものにふれることで
あなたも美しさを増しているのですから。

 これは、少女雑誌『ひまわり』の昭和22年4月号に掲載された中原淳一の言葉である。一緒に描かれた可憐な少女のイラストにもついため息が漏れてしまうが、60年以上も前に書かれたこの文章に、今でもハッと心に留まるものを感じてしまう。

 中原淳一は、イラストレーター、雑誌編集者、文筆家などとして活躍した希代のアーティスト。昭和7年に雑誌『少女の友』で挿絵画家としてデビューしたが、戦時中、そのハイカラな西洋的画風が軍部の目に止まり、仕事を干されてしまう。しかし、終戦後、自ら出版社を設立。『それいゆ』、『ひまわり』、『ジュニアそれいゆ』と、相次いで少女や婦人向けの雑誌を創刊した。

 これらのなかで、中原は女性たちに暮らしもファッションも心も美しく生きるための指針を、優美なイラストや、わかりやすい言葉で綴った詩やエッセイで示し続けた。

 今年はそんな中原の生誕100周年。これを記念して、中原の作品を偲ぶ書籍が次々と出版されている。『中原淳一の世界 幸せになる言葉』(世界文化社)は、中原が手がけた雑誌に綴られた、時代を超えて心を打つ言葉を集めた1冊。また、『中原淳一と「少女の友」~中原淳一・若き日の名作選』(実業之日本社)では、『少女の友』に掲載された挿絵や、彼の連載イラストエッセイ「女学生服装帖」を紹介する。これらから、普遍的な女性の美を実現するための具体的な方法を知ることができる。

 例えば、女性の動作についてこんなエッセイを残している。
「ほんのちょっとした心づかいによって、何気ない時も、美しいポーズをしていることができることをお考えください。どなたでも、写真に撮られたり、人が見ていると思えば、特別に気をつけますが、その心づかいをどうぞ平生も持ち続けてください。」(『女学生服装帖』昭和13年12月)

 ちょっと気が緩むと、猫背になったり、両脚がだらしなく広がったりしてしまうもの。そんな姿を気になる男性にでも見られたら、げんなりされてしまいそうだ。中原は人に見られていることを常に意識することで、いつでも美しい姿を保つことができると提案している。

 また、美しい心を相手に感じさせるだけの、言葉のエチケットも大切という指摘も。
「“すみません”という言葉は、いろいろ意味があります。(中略)“ありがとう”の代りに使う場合のことですが、なるべく“すみません”というのはやめるようにしたいものです。ちゃんと“ありがとうございます”と言う方が、なんだかのびのびとしたいい気持ちがしませんか?」(『ひまわり』昭和25年2月号)

こちらもついやってしまいがち。確かに、「すみません」より「ありがとう」の方が、相手にはポジティブに響くものだ。

 まだまだ紹介しきれない中原淳一の美学。夢っぽい絵を描くため、少女趣味だと誤解されることも。しかし、息子さんの談話によると、彼はセンチメンタルなことは嫌っていたそう。決して媚びることのない凛とした美しさを追求していたようだ。そんな価値観だって今でも十分理解できるし、さほど変わらないものではないだろうか。

中原が提案するような、一時の流行に左右されない“本当の美しさ”をぜひ身につけたいものだ。

文=佐藤来未(Office Ti+)