なぜ執事たちの性格はドSなのか?

マンガ

更新日:2013/4/5

 執事と聞くと、どんなイメージを抱くだろう? ご主人様にかいがいしく仕える存在で、それが喜びだと感じている従順な人。しかし、『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉/小学館)や『執事は電光石火で甘く抱きしめる』(天音佑湖/小学館)、3月9日発売の『一身上の都合により執事はじめました』(霧嶋珠生/海王社)など、小説から少女マンガ、BLに至るまで、どのジャンルでもドSキャラとして描かれることが多いのだ。普通は雇い主であるご主人様に反発などしないのだから、どちらかというとM気質だと思うだろうが、執事がドSとして描かれるのは一体なぜなのだろう?

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 ひとつは、主人であるお嬢様やお坊っちゃまがあまりにも世間知らずで負けず嫌いだから。朝は執事が起こしに行かないと起きてこないし、ひとりで髪をセットしたりすることもできないのだから嫌味のひとつも言いたくなる。それに、彼らのプライドを刺激することで上手くコントロールしていくのも執事の仕事。

 『謎解きはディナーのあとで』で執事の影山がお嬢様で刑事でもある麗子に「この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか?」なんて言うのも、彼女のプライドを刺激するため。それでも「お願いだから、あたしにも判るように説明してちょうだい」と事件解決のために頑張る麗子のことを認めてもいる。

 『一身上の都合により執事はじめました』の藤塚も、清継に「私は堂間の当主である方の世話役です」と言って、当主としての役目を果たさせるために無理やり見合いをさせるのだ。

 『執事は電光石火で甘く抱きしめる』の執事・各務も「一人前の女性なら世話係など必要ないのでは?」とバカにしたようなことを言ったりして、最低限のマナーを身につけさせようとする。

 また、執事はご主人様が小さい頃からお世話をしている場合が多いので、どうしても子ども扱いしてしまったり、かわいくて仕方ないのでつい意地悪をしてしまうことも。

 『執事は電光石火で甘く抱きしめる』の各務がお屋敷に来た頃は、理香が着替えるときでも「子どもの着替えを見て興奮する趣味はございませんので私の存在はお気になさらず」なんて言っていた。おまけに、屋敷の中でわめく理香に「はい家の中は走らない!」と注意し猫用のブラシで頭をひっぱたいていたほど。恋人同士になってからも、オバケに怯える彼女を見て「いけませんね理香さまそんなに怯えられては楽しくなってしまうじゃありませんか」なんて言っていた。

 『一身上の都合により執事はじめました』の藤塚は、男に襲われそうになっている清継を見てもなんとも思わず、服を着ようとしない彼に「なんですかいい年をした大人がまだ着替えを手伝って欲しいんですか? まったく困ったご主人様ですね」なんて子ども扱いする。

 『謎解きはディナーのあとで』の影山は麗子に仕えて1ヵ月ぐらいしか経っていないが、やはり子ども扱いで「大変失礼ながら、お嬢様の単純さは、まさに幼稚園児レベルかと思われます」なんて言う。謎解きの際も、ひとつひとつ丁寧に解説してもらった挙句「さすが、お嬢様。完璧でございます」なんて言われる始末。

 でも、1番大きな理由はもしかしたら自分を必要としてくれているのか不安で、それを確かめたいからついついドSな態度になってしまうのかも。わがままで傲慢なご主人様たちだけど、執事にとってはかけがえのない存在。だからこそ、素直じゃないご主人様たちに「必要だ」「大切だ」と言って欲しいのだ。

 『執事は電光石火で甘く抱きしめる』で記憶喪失になった各務にそっけない態度をとられたり、周りから記憶をなくす前と変わらないから「いっそこのまま記憶が戻らなくても支障ないんじゃない?」と言われて泣くほど怒る理香。「私のことだけ愛してて私のことだけでいっぱいだったの! 私とのことを忘れたままなんて許さない」と言って泣きながらキスされたことで、各務も喜ぶ。

 また『謎解きはディナーのあとで』の麗子も「ねえ、影山は急にどこかにいっちゃったりしないわよね……」と言い出し、「よく憶えておきなさい。あなたをクビにできるのは、世界中でわたしひとりだけなんだからね。」と宣言する。そして、普段は嫌味ばかりの影山も素直に受け入れるのだ。

 『一身上の都合により執事はじめました』の藤塚だって、本当は清継に見合いさせることに寂しさや苛立ちを感じていたけど、最後には清継に「一生俺の世話をしろ世話役としてもお前個人としても俺から離れることは許さないからな」と言われて嬉しそうに笑うのだ。

 こうやって見てみると、なんだか執事がドSになっていくのは仕方ないことだと思えてくる。でも、彼らのこんな裏の心理が読めればドS執事もかわいく思えちゃうかも?