女性マンガ家の先駆者に迫る 『JIN-仁-』村上もとかの新連載スタート!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

『ビッグコミックオリジナル』40周年記念号(小学館)

 『ビッグコミックオリジナル』(小学館)の創刊40周年記念として、村上もとかの連載「フイチン再見(ツァイツェン)!」が4月5日号(3月19日発売)より始まった。女性マンガ家の先駆者だった上田としこに焦点を当てた人物伝だが、村上の丹念な取材と、『JIN-仁-』でも発揮された高度な想像力が、読者を知られざる上田の熱いマンガ道にぐいぐい引き込んでくれる。

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 上田がマンガ家を志したのは、「女は家庭に入る」が当たり前だった昭和10年代だ。女性がペン一本で身を立てていくことがいかに大変だったかは想像に難くない。しかし、女性マンガ家として、道を切り開いた上田の功績は、同世代の『サザエさん』の長谷川町子と比べると、広く一般に周知されているとは言い難い。そうした点は、どうしても作品を埋もれさせる原因にもなり、上田の作品が一般流通でなかなか手に入りづらいのも現状だ。

 しかし、一部はオンデマンド出版などで購入できるので、今回の連載とぜひ併読してほしい。例えば、代表作の『フイチンさん』は、1957年~62年まで『少女クラブ』に連載された作品だが、今読んでもまったく古びない。上田独特の柔らかで伸びやかな線が、マンガにおける躍動感がどういうものなのかも実感させてくれ、読んでいて心地よいからかもしれない。

 本作の今後に注目するとともに、作者の再評価につながればと願う。

文=倉持佳代子
(ダ・ヴィンチ5月号「出版ニュースクリップ」より)