ベストセラー続出! おばあちゃん本が人気の理由

暮らし

2013/4/8

 今年、過去最高齢である75歳で芥川賞を受賞し、話題になった黒田夏子。受賞会見では「生きているうちに見つけてくださいまして、本当にありがとうございました」と語って会場を笑いに包んだが、じつはいま、高齢女性である“おばあちゃん”が続々と本を出版、さまざまなランキングを賑わせているのだ。

 たとえば、昨年出版した『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)がロングランでヒットし、ミリオンセラーを突破した渡辺和子は、現在86歳。今年1月に発売された『長生きしたけりゃ肉は食べるな』(幻冬舎)の若杉友子は76歳で、『おむすびの祈り「森のイスキア」こころの歳時記』(集英社)が話題を呼んだ佐藤初女は、現在91歳。今年1月に101歳で亡くなった柴田トヨは、『くじけないで』(飛鳥新社)が150万部のヒットとなったことも記憶に新しい。このほかにも、いまなお現役の写真家・笹本恒子の『好奇心ガール、いま97歳』(小学館)や、4月1日には室井摩耶子の『わがままだって、いいじゃない。92歳のピアニスト「今日」を生きる』(小学館)が発売されたばかりだ。こうした“元気なおばあちゃん”が人気を集めている秘密は、一体どこにあるのだろうか。

 そのひとつは、言葉の潔さ。たとえば、『置かれた場所で咲きなさい』では、「きれいさはお金で買えるが、心の美しさは買えない。」「まずは考え、次に感じ、その後に行動する。」「何もできなくていい。ただ笑顔でいよう。」といったように、とてもシンプルな教訓が並ぶ。しかし、長い人生のなかで得てきたもののとらえ方には、とても重みがあるように感じられる。苦労や苦難をひけらかして説教するのではなく、「日々の生活に否応なく入り込む一つひとつのことを、ていねいにいただくことで、痛みながら、平和といのちを生み出していきましょう」とさらりと言葉を綴る。『くじけないで』の「人生、いつだってこれから だれにも朝はかならずやってくる」という詩と同様に、その簡潔な“真実味”に胸をうたれる読者も多いのではないだろうか。

 また、おばあちゃんの“ていねいな暮らし方”は、せわしない毎日を送る現代人にとって日々を見直すきっかけになる。佐藤初女がおむすびに込める思いや、若杉友子の自然を慈しみ、大事に料理する姿勢は、“感謝する心”を教えてくれる。

 さらに、日本初の女性報道カメラマンとして世界を切り拓いてきた笹本恒子や、現役最高齢ピアニストの室井摩耶子の本からは、年齢に縛られない生き方を学ぶことができる。本のテイストや主旨は異なっても、経験による説得力だけではない、前向きな確固たる信念がそこにはあるのだ。

 林芙美子は「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」と半生をうたったが、じつは「花の命は長く、楽しきもの」なのではないか。そう感じられることが、おばあちゃん本が人気を集める秘密なのかもしれない。