太宰治の必殺技は“人間失格”!? 文豪たちのバトルがすごい

アニメ・マンガ

2013/4/11

 古書店を舞台にした『ビブリア古書堂の事件手帖』(三上延/アスキーメディアワークス)や辞書の編纂メンバーを描いた『舟を編む』(三浦しをん/光文社)など、近年小説や本を題材にした作品は鉄板ジャンルになっている。『ビブリア古書堂の事件手帖』のように本とミステリーを組み合わせたものや、文豪のラブストーリーを描いた作品などがたくさん出版されてきた。しかし、なんと今度はバトルものまで登場。 しかも、太宰治や中島敦、芥川龍之介といった名だたる文豪たちがバトルを繰り広げるというのだ。それが、4月4日に発売された『文豪ストレイドッグス』(春河35:著、朝霧カフカ:その他/角川書店)。真面目で暗くてインドア派でなんなら病弱で、体を張ることとはもっとも縁遠いと思われる文豪たちが、バトルとはそれだけでも驚きだ。しかも、文豪たちそれぞれの作品にちなんだ異能力を使って戦うというから、文学好きにはたまらない設定。文豪たちの必殺技や特殊能力とは、一体どんなものなのだろうか。

 『文豪ストレイドッグス』の主人公・中島敦は、孤児院から追い出された青年。彼が横浜にたどり着いて出会ったのは、軍や警察に頼れない依頼を専門にしている武装探偵社の面々だった。そこでは多くの文豪たちが働いており、なんと福沢諭吉や太宰治、国木田独歩に谷崎潤一郎といったメンツが勢ぞろいしているのだ。そして、彼らにはそれぞれ特殊な能力がある。

 太宰治の能力は、触れただけですべての能力を無効化できる“人間失格”。元の太宰も自分のダメさ加減を作品として書いていたし、自殺未遂もよくする。読者からも暗い、陰鬱といったイメージをもたれており、太宰ファンなんて「太宰だけが自分を分かってくれる」と思う信者のような人が多い。そんな太宰には、周りの人も自分もダメにしていくイメージがある。彼の作品を読んだ読者からもあらゆる希望や生きる意味を奪い去る太宰の能力としては、ぴったりかも。

 また、手帳に書いたものを具現化できるのは、国木田独歩の“独歩吟客”。能力名は、何も作品のタイトルだけではない。この独歩吟客は、彼が寄稿の署名として使っていたもの。ジャーナリストとしても活躍していた彼にとって、手帳は必需品だったのだろう。そんなアイテムまで盛り込まれているので、なぜこの人はこんなキャラでこんな能力を使うのかと考えてみるのも文豪好きにはたまらない。

 それに、谷崎潤一郎の“細雪”は「雪の降る空間そのものをスクリーンに変える」ことができ、自分の姿を隠したり、虚像を作り出すこともできる。しかも、彼の作品である『痴人の愛』のヒロインと同じナオミという名の妹まで登場するのだ。一瞬、谷崎に“ナオミ”という名の妹なんていただろうか? と思うが、そこから興味をもってみるのも楽しいだろう。

 そして、そんな武装探偵社と敵対するポート・マフィアは、あの芥川龍之介だ。もちろん、彼にも“羅生門”という能力がある。身に纏う黒のマントを獣化して自由自在に操り、ありとあらゆるもの。空間さえも喰うのだ。『羅生門』をはじめ、『蜘蛛の糸』や『薮の中』など、どんな人の心にも眠っている悪の声に耳を傾けてそれを描き出してきた彼。だからこそ、彼ほど悪の気持ちを理解できる悪役はいないのだ。

 他にも、与謝野晶子の“君死給勿”や江戸川乱歩の“超推理”、宮沢賢治の“雨ニモマケズ”、福沢諭吉の“人上人不造”など、さまざまな文豪と気になる能力が次々と出てくる。

 さらに、ナタリーの著者インタビューでは今後も確定ではないが梶井基次郎や石川啄木、森鴎外、夏目漱石といった人物が登場してくるんだとか。彼らには、どんな名前のどんな能力がさずけられるのか? 今から気になって仕方がない。

 実は主人公の中島もある能力をもっているのだが、その内容は一体どんなものなのか? ヒントは、中島のデビュー作であり、代表作でもある『山月記』に関係しているということ。気になるその答えは、ぜひ本を読んで確かめて欲しい。