ホビットからダークナイトまで!世界の腐女子はこの映画に萌えていた

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更新日:2013/4/12

 男の世界に“萌え”を見出す腐女子のみなさん。みなさんが最近見た映画で、「これは萌えた!」という作品はなんですか? そして、その作品に萌えた理由は? そんな映画の“萌え”について語っているのが、3月30日に発売された『21世紀萌え映画読本』(大木えりか:著、山田睦月:イラスト/新書館)だ。この本では、『ロード・オブ・ザ・リング』から「007」シリーズ最新作まで、2000年代の映画を腐女子視点で紹介している。そこで、今回は腐女子がどんなところに萌えを感じるのか。そのポイントを、作品と合わせて紹介していこう。

 ひとつは、ホモソーシャルな関係性だ。ホモセクシュアルは、同性の性的な関係を表すが、このホモソーシャルは社会的な結びつきを表すんだとか。たとえば、会社や政治、軍隊、寮や体育会系のサークルなど、男同士の友情や全体の連帯感、戦うべきライバルがいる。そんな関係性に萌えるのだ。そのホモソーシャルを思う存分楽しめるのが、『ロード・オブ・ザ・リング』とその続編である「ホビット」シリーズだ。それに、やおいの元祖とも言われる『スター・トレック』も外せない。欧米では、日本のBLでカップリングを表す際に使われる「×」の代わりに「/(スラッシュ)」が使われるのだが、その/が生まれたのがこの『スター・トレック』からなのだ。この作品も、宇宙艦隊という限られた場所で、おまけに厳密な序列のもとに決まった役割がある。だから、船長であるカークと副長であるスポックも強い絆で結ばれているし、明るくみんなに愛されるカークと冷静なスポックの組み合わせに萌える人が多かったのだろう。とにかく女性の影が薄いこれらのシリーズ。だからこそ、敵対する相手との争いや強い憎しみ、逆に主のために尽くす自己献身的な姿など、あらゆる男同士の関係性だけにスポットを当てられるのだ。自分がどんな関係性に萌えるのかを探すには、ぴったりの作品かも。

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 また、最近人気なのが“ブロマンス”と呼ばれるジャンルだ。これは「ブラザー」と「ロマンス」を掛け合わせてできた言葉で、萌えというか友情の域を超えている2人。性的な関係はないが、ホモソーシャルの中でも極めて近い存在である2人を表す言葉だ。なかでも代表的なのが、「ホモーズ」と呼ばれるほど腐女子人気の高い『シャーロック・ホームズ』。ガイ・リッチー版のホームズは、結婚して医師業に専念すると言うワトソンに対して室内で銃をぶっぱなすし、結婚相手であるメアリーにも失礼の限りを尽くす。そんなやりたい放題のホームズに対して、ワトソンは文句を言いながらもなんだかんだで捜査に協力してしまう。こんな2人を見て、妄想が膨らまないはずがない。

 そして、お国柄として萌えるのはやはり英国紳士たち。英国紳士の「みじめなほど自己抑制的で、礼儀正しい」ところを堪能できるのが、『英国王のスピーチ』や『アメイジング・グレイス』だ。アメリカ映画での男同士の友情は、派手な殴りあいのケンカをして友情が深まるといった作品が多い。それに対して、英国映画の紳士たちはすごく控えめ。ケンカも殴りあいや怒鳴りあいではなく、つい「致命的な一言」を口に出してしまったことで、相手がショックを受けて立ち去るといったパターンが多いそう。普段なかなか感情を表に出さない彼らだからこそ、その秘めた思いを垣間見たとき、私たちは萌えるのかもしれない。

 さらに、一見萌えとは程遠いように感じる『ダークナイト』でも、実は「これぞ萌え!」という関係性が築かれているのだ。お互いに想い合うだけじゃなく、憎しみあっていたり、互いに違う感情を持って敵対していても萌えは生まれる。バットマンにひかれ、彼がいるからこそ悪を追求することができるジョーカー。彼は、自分をこれほどまでに楽しませてくれるバットマンを決して殺したりしない。逆に、ジョーカーがいるからこそ、必死に善であり続けようとするバットマン。それゆえ、彼は自分を殺さないジョーカーを殺すことなどできないのだ。それぞれ違う思いを抱えながらも互いに必要としあい、殺せない2人。この関係を“萌え”と呼ばずして何と呼ぶのか。

 俳優に萌えることはもちろんあるだろうが、1歩進んで彼らの関係性、お国柄といったポイントにも注目してみると、もっともっと萌え映画を開拓していけるのでは? そのための参考にするには、もってこいの1冊だ。