トイレを見れば文化がわかる!? 世界の変なトイレたち

海外

公開日:2013/4/13

 私たちが日頃からお世話になっているトイレ。『旧約聖書』の中でモーセは「陣営の外に1つの場所を設け、用を足すときはそこに行きなさい。武器のほかにへらを用意し、外でかがむときにはそれで穴を掘り、再びそれで排泄物を覆いなさい」と説いている。この時代から、すでに“トイレ”というものが存在していたことがわかる。現代において、トイレは世界各地でさまざまな形に発展しており、トイレを研究することは文化を解き明かすことにつながるようだ。

 3月29日に発売された『世界の変なトイレ』(モーナ・E・グレゴリー、シアン・ジェームズ:著、清宮真理:訳/エクスナレッジ)では、世界142カ国のトイレを紹介している。この本はカナダに住む2人の女性が各国を歩き回って撮影したもので、男性トイレまでのぞくなど、周囲に奇異な目で見られただろうことは想像に難くない。しかしそのおかげで、私たちは常識をくつがえす数々のトイレを目にすることができる。ひとつひとつのトイレにつけられたキャッチコピーも秀逸で、見応えたっぷりの1冊だ。

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 例えば、「プライバシーはありません 仲良く並んで」と紹介される中国の公衆トイレは、レンガ作りの床に3つの四角い穴が並んでいる。穴の間に仕切りはなく、ほかの利用者に丸見えの状態だ。中国におけるトイレは、住民同士が会話をする一種のコミュニケーションの場と見なされていたらしい。今でも田舎の方に行けば、このようなトイレが多く残っているという。

 また、イギリスの「金魚が住んでいるトイレ」は、トイレタンクが水槽になっていて、かわいい金魚が赤いひれを揺らしながら涼しげに泳いでいる。この地域の水は塩素が少なめなので、金魚たちにとっては適した環境なのだという。この場所で死んでしまった金魚の、その行く末が案じられる。

 一方、パナマのナルネガ島で桟橋の先に設置されたトイレは、「ダイバーは“知らぬが仏”」と評される。木造の便器の奥にはシュノーケリングを楽しむ人の姿が。何も知らず気持ちよさげにトイレの下を泳いでいるダイバー。そこがどんな場所なのかを彼らが知った時、いったいどんな顔をするのだろうか。

 驚きのトイレが並ぶなか、「スリッパからスリッパへ」と題されたページが。「あれ? 普通じゃん」と思いきやその通り、おなじみの日本のトイレで、次のように紹介されている。「日本の民家では、客人は戸口に足を踏み入れたら履き物を脱ぎ、(中略)スリッパを履かなければならない。トイレを使うためには、そのスリッパからさらにトイレ用スリッパに履き替える必要がある」。私たち日本人のトイレも、世界から見れば十分変わったトイレなのだ。

ストレスの多い現代社会において、トイレはひとり静かに物思いにふけることができる場所。便器に座って、私たち日本人のトイレに思いを馳せてみるのもいいかもしれない。

文=佐藤来未(Office Ti+)